2020年度グリーンファーム募集馬の検討②

2020年度グリーンファーム募集馬の検討結果を備忘録として書き残しておくシリーズの2回目です(前回はこちら)。今回は関西所属の残り5頭について検討結果を記して行きます。

【注意】
・あくまでも個人の見解です。
・状況の変化で見解を変えることが普通にあります。
・今年からは歩様についても自分なりに評価しました。
・馬に優しく、厩舎には厳しいです。

【補足】
・プレミアム値についてはこちらを参照願います。

・予測体重についてはこちらを参照願います。


1905.エレンシアの2019(受付終了)

■駐立姿勢
駐立写真を一見して「格好良さ」を感じる立ち姿です。胴伸びがあり、脚長は標準。トモの大きさも標準的。首の長さは気持ち短め。肩の角度と繋ぎの角度は僅かに立ち気味です。飛節の角度も標準で、前膝の角度に不安はありません。太い脛は好評価です。トータルで標準的な作りをしており、距離はマイル+α程度が適正と予想しています。但し、前後共に筋肉の発達は目立たず、緩い印象を受けます。

■歩様
歩速はキビキビしていて、何よりも後ろから見て真っ直ぐ歩けているところが好印象です。後肢はシッカリと踏み込めていて、飛節も伸びます。前肢も普通に出ていて、可動域は広いと言えます。一方、筋肉の質感はもう一つで、粘りの部分が感じられません。現時点で緩さを感じますので、今後どこまで実が入って来るのかがポイントになると思います。

■厩舎
遂にGⅠを制し、若手ではトップ調教師と言える杉山厩舎に預託されました。現在の厩舎リーディングは5位をキープしています。ちなみにグリーンFから杉山厩舎への預託は3年連続で、是非ともこの良好な関係は継続して欲しい所です。厩舎を見ただけでも出資を決めたくなるレベル。

■価格
募集価格は1400万円。牡馬ですがカタログスペックでは地味な部分が多く、価格は抑えられた印象です。プレミアム値は+38ポイントでノーマルクラス。ここで、那須野生産馬でノーマルクラス以上の募集馬は勝ち上がり率が良好で、特に牡馬の本仔には期待が持てます。

■測尺
「馬体重:428kg、体高:154.0cm、胸囲:173.0cm、管囲:20.0cm(8月上旬)」で、馬体重こそ軽目ですが、牡馬で管囲もあることから、特に懸念材料とは思いません。デビュー時の予測体重は472Kgと出ましたので、芝で走れれば十分でしょう。

■総評
カタログスペックが地味で、動画公開前は然して巷の話題にならなかった本仔ですが、馬体が確認できたところで一気に人気が急騰しました。また、この人気には厩舎の評価も寄与していると思われます。個人的にも上位評価の1頭でしたが、如何しても気になったのは筋肉の緩さで、育成で何処まで実が入って来るかを確認したいと考えました。平素ならば積極的様子見が可能な募集馬だと思うのですが、本仔が早期満口になってしまうあたり、今年の応募状況は例年と違った様に感じています。自分的に惹かれる部分は大きいものの、予算的な限界もあって早期出資には至りませんでした。

さて、ここからは余談ですが、サンデーサイレンスフリーの本仔の血統背景は最近では珍しく、これが本仔の地味な印象に繋がっている様にも思えます。個人的にはサトノアラジンと配合した本仔の1つ下が猛烈に気になる存在であり、是非とも来年の募集馬に加えて頂きたいと思います。

1906.ボーナスチャンスの2019(受付中)

■駐立姿勢
明らかな胴長短足です。これだけ見ても短距離適性と判断するところですが、一方で首が長く、肩が寝ているところからは、一定の距離まではこなせそうにも思えます。そう言う意味ではどっち着かずで、バランス的にはイマイチな印象と言えます。(注:カタログの駐立写真をみると、極端な短足には見えず、撮影角度が影響している可能性もあります。)背中が長く、胴回りは寂しく見えます。現状でも500Kg超の体重がありますが、腰高なので更なる成長の余地がありそうです。脛が太目のところは好印象。前膝の角度にも不安はありません。また、半腱半膜様筋の幅が確認出来る様に、筋肉の発達が見て取れるところは好評価です。

■歩様
歩速はキビキビと歩けています。後肢はそれなりに踏み込めていて、飛節も伸びます。一定の可動域は確保している印象です。前から見たときの首の振り方も個人的に好みです。一方で、筋肉の発達は確認できるのですが、質感と言うか柔らかさは今一歩な印象を受けます。

■厩舎
預託先は開業2年目の坂口厩舎です。ここまでの厩舎成績に目立ったものはありませんが、開業して未だ間がなく、成績を問うには早計かもしれません。坂口厩舎に付いては昨年もグリーンFからの預託予定があったのですが、故障により募集中止となってしまいました。そう言う意味で、本仔の預託は埋め合わせ的な意味合いもありそうです。

■価格
募集価格は1400万円。プレミアム値は-202ポイントで、ディスカウントクラスに判定されます。那須野系の生産馬はノーマルクラス以上で勝ち上がり率が高いのですが、本仔は牡馬なので、ディスカウントクラスであっても期待感は十分に持てると思います。

■測尺
「馬体重:505kg、体高:162.0cm、胸囲:181.0cm、管囲:21.0cm(8月上旬)」で、既に馬体重が500Kgオーバーです。デビュー時の予測体重は548Kgと出ており、完全に警戒領域に入っています。一応、管囲は21cmあって、前膝の角度にも不安感はありませんから、多少の体重は問題ない様に思えますが、それでも548Kgでは重過ぎでしょう。これに対し、駐立姿勢は腰高の様子を示していますので、更なる成長が避けられない感触です。

■総評
体型と体重からみると短距離適性と考えるのが妥当だと思いますし、その点で筋肉の発達が確認できる点も方向性が合致しています。微妙に硬そうで筋肉の質感は今一つですが、短距離ならば影響は小さいかもしれません。一方で、本仔の最大の懸念材料は馬体重でしょう。過度な馬体重は故障に繋がりますので、どの程度で成長が止まるのか、見極められるまで様子見することが肝要だと思います。なお、左後一白には個人的に魅力を感じます。

1907.ベアトリッツの2019(残口僅か)

■駐立姿勢
測定値は何れも平均的な範囲に収まっており、そう言う意味ではバランスが良いと言えるかもしれません。但し、トモが小さ目で、筋肉の発達も見えないことから、全体に迫力が感じられません。脛が細目である点もマイナスです。体型的に距離適性はマイル前後に思えますが、繋ぎが短く立っており、トラック適性はダート寄りではないかと思います。なお、腰高なので成長の余地はありそうです。

■歩様
短い動画の中でも、歩き方が何処か変に見えます。前後が連動していない様にも見えますし、歩幅が途中で変わる様にも見えます。スローで良く見ると、左右の後肢で踏み込みの幅が違うように思えます。右後肢の方が踏み込みが大きく、左後肢は踏み込みが浅い様に見えました。何れにしても、危うい感が否めません。更に、前肢の出も小さく、可動域は狭く見えます。また、筋肉については強さも柔らかさも感じられません。

■厩舎
開業3年目の石坂公厩舎に預託されます。情報公開前は母を管理した音無厩舎の可能性が高いと思った本仔の預託先ですが、未だ実績の無い若手厩舎に託された辺り、本仔への期待度が透けて見えている様に思えます。

■価格
募集価格は1400万円。プレミアム値は-102ポイントで、ノーマルクラスに判定されます。牝馬とは言え、モーリス産駒としては安価な印象を受けます。この価格が抑えられた要因が何処にあるのかが、出資判断には見極めたいポイントです。

■測尺
「馬体重:417kg、体高:152.0cm、胸囲:173.0cm、管囲:19.1cm(8月上旬)」で、デビュー時の予測体重は456Kgと出ました。一応、各測定値は個人的な出資基準を満たしているのですが、特に管囲の19.1cmは下限ギリギリで安心感がありません。

■総評
血統背景的に期待感の大きな仔だったのですが、実馬の情報を見て、ちょっと推しどころが無くなってしまいました。体格的に小さい点についてはギリギリ許容出来るのですが、歩様の怪しさには目を瞑ることが出来ません。現時点で、様子見対象からは外れています。

1908.デザートオブムーンの2019(受付中)

■駐立姿勢
胴長で短足傾向。肩は寝て、トモ幅はあります。一応、前後のバランスは取れていると思います。まだ腰高で成長の余地が大きく、これから変わって来るかもしれません。飛節の角度は曲飛傾向で、繋ぎは寝ている様に見えます。前膝の角度に不安感はありません。トラック適性は判断出来ませんが、距離適性は短い方向だと思います。筋肉の状態はカタログ写真で見るとハッキリした凹凸が見えるのですが、動画では今一つ確認することが出来ません。

■歩様
曲飛の割には後肢の踏み込みがイマイチ深くありません。前肢の出も小さく、可動域は相当狭いと見て良いでしょう。そして、本仔も歩き方が何処か妙に見えます。左前肢の出が小さいことが、その様に見える原因かもしれません。

■厩舎
グリーンFからの預託実績の多い、加用厩舎に預託されます。年度毎に成績の浮沈が大きな厩舎ですが、今年の成績が冴えない点は引っ掛かります。一方で、過去のグリーンF預託馬の成績は安定しており、特に安価な仔馬を預かったときに優れた成績を残している事実(1400万円以下の募集馬で、5/8頭が勝ち上がり)は評価に値すると思います。

■価格
募集価格は1200万円。牡馬にも関わらず、昨年募集の半姉ヴェイルオブナイトよりも安価なプライシングになっています。プレミアム値は-282ポイントで、ディスカウントクラスに分類されます。

■測尺
「馬体重:450kg、体高:154.0cm、胸囲:169.0cm、管囲:20.5cm(8月上旬)」で、デビュー時の予測体重は508Kgと出ました。短距離適性と想定した上で、サイズ感はベストの様に思います。

■総評
可動域が狭いことは短距離馬であれば影響を緩和できると思いますし、体型や馬体重からは明らかな短距離適性を感じます。その一方で、歩き方が如何しても気になってしまいます。ここはグリーンFらしく、育成中にトラブルが生じないか、ギリギリまで様子見するべき募集馬である様に思います。

1919.マウントフジの2019(受付終了)

■駐立姿勢
胴伸びがあって、脚長は標準。トモに幅があって面積もあります。一方で肩の角度が立ち、前側の幅が狭く見えます。首は太くて長く、全体的に不格好なバランスに見えます。また、繋ぎの角度が明らかに立っており、トラック適性はダートになると思わせます。また、体型から距離適性はマイル以下と予想します。一方、筋肉の状態はカタログ写真ではメリハリが見えるのですが、動画では今一つハッキリしません。

■歩様
先ずはキビキビと歩けているところが好印象です。後肢の踏み込みはシッカリして、飛節もそれなりに伸びています。一方で、前肢の出は小さく見えます。筋肉の量は今一つで、柔らかさもあまり感じません。

■厩舎
母マウントフジと同じく宮本厩舎に預託されます。これは既定路線と考えて良いでしょう。但し、近年の宮本厩舎への預託馬は祟られているが如く頓挫に見舞われていますので、本仔に付いてはその嫌な流れから、先ずは逃れてほしいと思います。

■価格
募集価格なしの特別提供馬です。プレミアム値は-1452ポイントで文句なしのディスカウントクラスです。ここで、那須野系生産馬の牡馬はディスカウントクラスでも良好な勝ち上がり率を残しており、懸念材料にはなりません。

■測尺
「馬体重:448kg、体高:153.0cm、胸囲:178.0cm、管囲:19.5cm(8月上旬)」で、やや小さ目のサイズ感ではありますが、個人的な基準値の範囲には収まっています。デビュー時の予測体重は508Kgと出ており、豆タンク的なイメージになりそうです。管囲が細めなので、体重は500Kg内に収まった方が安心ですが、脚質が短距離ダート適性であれば、これ位の馬体重は有利に働くと思います。

■総評
特別提供馬の出資判断に際しては、収支が黒字化する「勝ち上がって1勝クラスでも戦えるレベル」に募集馬が達するか否かがポイントであると思います。これに対し、本仔に付いては「1勝は可能なレベル」と判断したことから、応募することを決めました。決してバランスの良く見える馬体ではありませんが、母と同じ短距離ダート適性とすれば、上手く嵌る様に思います。

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