2020年度グリーンファーム募集馬の検討③

2020年度グリーンファーム募集馬の検討結果を備忘録として書き残しておくシリーズの3回目です(前回はこちら)。今回は関東所属の前半5頭について検討結果を記して行きます。

【注意】
・あくまでも個人の見解です。
・状況の変化で見解を変えることが普通にあります。
・今年からは歩様についても自分なりに評価しました。
・馬に優しく、厩舎には厳しいです。

【補足】
・プレミアム値についてはこちらを参照願います。

・予測体重についてはこちらを参照願います。


1909.ナスノシベリウスの2019(受付終了)

■駐立姿勢
胴伸びがあって脚は長目。トモのサイズは標準。肩と繋ぎの角度は寝ています。首がもう少し長いと良いのですが、基本的には中距離適性としてバランスが取れていると思います。飛節の角度は標準的で、前膝の角度にも気になる所はありません。筋肉の凹凸がみられ、半腱半膜様筋の幅も確認できます。腰高で成長余地は大きく、ここからまだ変わって来そうです。

■歩様
キビキビと歩けている所が好印象で、首の振り方も個人的に好みです。前から撮影した動画では、前肢が僅かに外向気味に見えますが、許容範囲と判断しました。後肢の踏み込みは深く、飛節も伸びますが、前肢の出はもう一つに見えます。本仔の動画を見て最も惹かれたのが筋肉の質感で、粘りと柔軟性を感じさせます。筋肉の強度はもう一歩ですが、「緩すぎる」のとは違うと判断しました。

■厩舎
本仔の兄姉は全て武井厩舎に預託されており、本仔もそれに倣う形となりました。ちなみに、母ナスノシベリウスは和田正道厩舎の所属でしたが、武井師は調教師免許を取得する前に和田厩舎で調教助手を務めていました。そう言う意味でも、本牝系を知り尽くした調教師に託されたと考えて良いでしょう。
一方、開業6年目の武井厩舎は着実に成績を伸ばして来ましたが、今年は大きく成績を落としています。詳細は知らないのですが、とある有力馬主さんとの間でトラブルがあったとの噂もあり、能力馬が大量に引き上げられたことが成績に響いている様です。

■価格
募集価格は3000万円です。グリーンファームの牝馬としては突出して高い価格設定と言えるでしょう。プレミアム値は1098ポイントで、文句なしのプレミアクラスです。ここで、那須野系生産馬でプレミアクラスに判断される募集馬は高確率で勝ち上がっており(2012年生産馬以降で7/8頭が勝ち上がり)、少なくとも勝ち上がりまでは計算することが出来そうです。

■測尺
「馬体重:414kg、体高:154.0cm、胸囲:172.0cm、管囲:19.8cm(8月上旬)」で、特に気になる所はありません。5月生まれでこの数値であれば十分なサイズと考えて良いでしょう。デビュー時の予測体重は470Kgで、芝馬として丁度良い感じです。

■総評
2020年の募集馬の中で、自分が本命としたのが本仔です。牝馬で3000万円のプライシングは高値を付けてきた印象ですが、「価格に見合うだけの仔馬が募集され」と素直に判断することにしました。体型的にクラッシックディスタンスまでこなせると見ましたし、何よりも筋肉の質感に惚れました。筋力自体は調教の過程で付けて行く必要がありますが、オープン馬を視野に入れた成績を残すためには、その前提として質的に優れた筋肉が必要と考えて、本仔への応募を決断しました。また、オカルト好きな自分としては左後一白が最後の背中を押してくれました。

1910.ジャドールの2019(受付中)

■駐立姿勢
胴長で短足。かなりの腰高なのでこれからまだ変わって来そうです。肩は立ち気味で、繋ぎも短くて立ち気味です。スタイルから判断すれば短距離適性と考えて良いでしょう。トモの幅が広く、面積も大きい所が特徴的。そして何より、太い脛が際立ちます。飛節は強めの曲飛で、前膝の角度はちょっと怖い感じがします。体型的にはパワーがありそうな印象ですが、筋肉の隆起がもう一つ目立ちません。特に前側の筋肉が目立たないところが、短距離馬としては気掛かりなところです。

■歩様
先ず、歩速がやや遅い所が気になります。曲飛だけあって、後肢の踏み込みは深く、その割に飛節は伸びています。その反面、前肢の出は今一つな印象。筋肉の質感は柔らかそうで良い様に思いますが、一方で緩さも感じてしまいます。今後の育成過程で、面積の大きなトモにどこまで筋肉が着いてくるか、様子見したいところです。

■厩舎
田中博康厩舎へ預託されます。開業3年目の厩舎ですが、着実に成績を上げており、美浦のトップ厩舎に数えられるのも時間の問題でしょう。グリーンFとはクラブ唯一のGⅠ馬クィーンスプマンテを勝利に導いたことで密接な関係が構築されており、開業初年度から継続的に有力馬の預託を続けています。グリーンFから預託する関東の厩舎としては、尾形厩舎と並ぶ存在感を示しており、この良好な関係は大切にして行って欲しいと思います。

■価格
募集価格は2400万円です。ロードカナロアの種付料の高騰により、グリーンFとしては高額の募集となりました。プレミアム値は+298ポイントで、プレミアクラスに判定されます。プレミアクラスの社台系生産馬は相応の勝ち上がり率を確保していますので、問題はそれ以上の積み上げが出来るか否かの見極めでしょう。

■測尺
「馬体重:454kg、体高:154.0cm、胸囲:173.0cm、管囲:20.3cm(8月上旬)」で、サイズ感は十分です。デビュー時の予測体重は510Kgで、短距離馬と想定して、ベストな馬体重になりそうです。

■総評
現在の種付料最高額の種牡馬であるロードカナロアの牡馬ですから、募集価格の2400万円は妥当なプライシングと言えるのですが、如何してもここ1~2年のロードカナロア産駒の伸び悩みを見てしまうと、割高感を感じずにはいられません。只、本仔については短距離馬として良好なバランスを保っており、惹かれる要素は多分にあります。前述の通り、筋肉の質感が良いと思うので、あとは大きなトモに強い筋肉がついてくるかがポイントになりそうです。シッカリとした筋力がついたことを確認出来れば、この募集価格でも高くはない様に思います。

1911.アースサウンドの2019(残口僅か)

■駐立姿勢
一見して格好の良いスタイルをしていると思います。胴が短目の所が引っ掛かりますが、測定値が全体的に基準範囲に収まっており、距離適性はマイル前後と予想します。トモが小さい様に見えますが、測定値をみると然して小さい値でもありません。父モーリスに似て出た印象で、アースサウンドの産駒としては珍しく芝のマイルで走れそうな体型に見えます。

■歩様
歩速はキビキビと歩けていて好印象です。後肢は深く踏み込めている一方で、飛節は伸びています。只、前肢の出はもう一つの印象です。最も気になるのは筋肉の力強さで、ここは育成時の成長を様子見したいところです。

■厩舎
安定的にグリーンF募集馬が預託されている、関東厩舎の中ではトップと目される尾関知人厩舎に預託されます。近年はリーディング順位がやや落ちている状況ですが、クラブからの預託馬は安定的に継続しています。個人的に「少し足りない馬を上手に勝ち上がらせている」印象があって、関東の上位厩舎としてグリーンFには良好な関係を維持して欲しいと思います。

■価格
募集価格は1800万円です。プレミアム値は+298ポイントで、プレミアクラスに分類されます。牝馬で1800万円の価格設定には盛られた印象も受けますが、前述した通り、那須野系生産馬でプレミアクラスの募集馬は高確率で未勝利を脱出していますので、1800万円の募集価格でも十分楽しませて貰える様に思います。

■測尺
「馬体重:444kg、体高:156.0cm、胸囲:176.0cm、管囲:19.8cm(8月上旬)」で、懸念を感じる部分はありません。デビュー時の予測体重は458gで、出来ればもう少し大きくなって欲しいところです。

■総評
「5代アウトブリードのモーリス産駒」と言う、配合的に妙味を感じる産駒であり、外見も父モーリスに似て出たことから、出資意欲の湧く募集馬です。短距ダート適性の産駒が多いアースサウンドとしては、珍しく芝のマイルクラスで走れる馬が出た印象ですが、それには見合うだけの筋力が必要になります。ここは積極的に様子見をして、筋肉の発達状況を見極めたいところです。

1912.サザナミの2019(残口僅か)

■駐立姿勢
胴長で短足傾向。肩が寝ていて、繋ぎも寝気味です。トモ幅が狭いのですが、深さで多少はカバーしています。首は長目。飛節は曲飛傾向で、脛は太目です。前膝の角度に不安感はありません。
短足傾向から距離適性は短距離寄りと見ていますが、首が長く肩が寝ているところから、マイルまでこなせるかもしれません。本仔の体型は母サザナミと良く似ています。特に、幅が狭く盾に深いトモの形、首の長さ、飛節の形、薄い馬体、等は母親と本当によく似ており、懸念材料には当たらないと思います。筋肉の量については今後の育成で鍛えて貰うよりありません。

左:サザナミ 右:サザナミの2019

■歩様
歩速がキビキビとしているところは好印象。前後からの動きも真っ直ぐに歩けていて特に癖はありません。後肢の踏み込みが浅いところが気になりますが、これは母親譲りです。一方で、筋肉の質感はもう少し粘りが欲しい感じで、これについては母親の方が良く見えました。

■厩舎
開業3年目の林厩舎に預託されます。開業から徐々に成績を伸ばしてきましたが、今年は昨年ほど勝てていません。尤も、成績を問うには時期尚早でしょうか。開業当初よりグリーンFからの預託馬があり、調教助手を務めていた矢野厩舎の枠を引き継いだ印象です。

■価格
募集価格は1600万円です。同じハービンジャー産駒で牡馬のマキシマムドパリの2019とは随分価格差がつきましたが、これは馬格が小さいことに因るものと考えて良さそうです。プレミアム値は-52ポイントでノーマルクラスです。

■測尺
問題の測尺は「馬体重:385kg、体高:150.0cm、胸囲:167.0cm、管囲:20.3cm(8月上旬)」でした。確かに馬体重は300Kg台なのですが、管囲は20.3ありますので、極端な懸念材料にはならないと考えています。デビュー時の予測体重も450Kgと出ており、これくらい大きくなってくれるのであれば、サザナミの仔としては十分なレベルだと思います。
参考までに、母サザナミの募集時の測尺は「馬体重:392kg、体高:151.0cm、胸囲:167.0cm、管囲:19.0cm(8月中旬)」で、デビュー戦の馬体重は396Kgでした。

■総評
兎にも角にも懸念材料は馬体重だと思いますので、その増加状況を積極的に様子見するのが、グリーンF募集馬としては正道である気がします。自分の場合、「本仔には無条件で出資する」と決めていましたし、そもそも馬格の大きい仔が出るとも思っておらず、ある意味で想定の範囲でした。骨太の骨格には安心感を感じましたし、母親譲りの体型からは短距離適性が感じられたことから、むしろ不安感は少なく出資判断が出来たと思っています。只、実績のまだ無い厩舎に預託されてしまった点は残念です..。

1913.アースリヴィングの2019(受付中)

■駐立姿勢
脚が長目と言うよりは寸詰まりの印象です。肩は立ち気味で、繋ぎも立ち気味。やや胸の深さが足りない印象を受けます。首は短く映りますが、これは曲げている影響もありそうです。飛節の角度は明らかな直飛。腰高なので、これから変わって来そうですが、現時点では今一つ適性が予測出来ません。強いて想像すればダートの短い距離でしょうか。

■歩様
歩速がスロー気味のところが気になります。前後から見て真っ直ぐ歩けているところは好印象ですが、駐立写真からは想像しなかった体高の低さを感じます。直飛の割に踏み込めているところは好印象ですが、伸ばした時の蹴りにはもう少し力強さが欲しい気がします。

■厩舎
母から続いて、この牝系は小笠厩舎に預託されることが決まっている様です。これを安定・安心と見るか否かは会員さん個々の判断に拠るところでしょう。個人的に「本厩舎の預託馬には決して出資しない」と誓っているので、預託先が明らかになった時点で出資対象からは外れています。ちなみに調教師リーディングは例年100位前後です。

■価格
募集価格は1600万円です。牡馬とは言え、上が続けて2000万円台で募集されてきたことと比べれば、価格的には抑えられた印象です。プレミアム値は+98のノーマルクラスとなり、平均的な値付けであることがわかります。そう言う意味では、まだ半姉シネマソングスの活躍によるプレミアムはまだ乗っていないと言うことでしょう。只、シネマソングス以後の産駒が価格の割に勝ち上がっていない事実をみると、安直に手は出し難い様に思えます。

■測尺
「馬体重:420kg、体高:150.0cm、胸囲:176.0cm、管囲:19.0cm(8月上旬)」で、体高も管囲も個人的な出資基準のボーダーライン上にあります。何か強く背中を押す要素が見つからないと、ちょっと行き難いサイズ感でしょう。デビュー時の予測体重は466Kgで、過去にネタにした「予測体重÷管囲^2」の指数値を計算すると1.29となり、警戒レベルにあることが判ります。

■総評
血統背景的には妙味を感じる募集馬なのですが、測尺と厩舎から個人的に出資対象には成り得ません。馬体についても何処まで筋力が付いてくるかがポイントですが、一方で馬体重の増えすぎもリスク要素となりますから、色々と難しい気がします。

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