マンハッタンフィズの2018の再評価

2019年度募集馬の中で、最近になって無性に気になる仔馬がいます。今回はその再評価をしてみたいと思います。

さて、その気になる馬と言うのが「マンハッタンフィズの2018」です。これまでにも、こことかこの辺りでインプレッションを記述して来ましたが、正直なところ高い評価はしてきませんでした。また、世間的な評判を観察しても、特に衆目を集める仔馬ではない様に思います。

しかし、本仔の牝系はマンハッタンカフェが名を連ねる極めて華やかな一族です。常識的に考えれば、グリーンファームから募集されるレベルの血統背景ではありませんし、それが牝馬とはいえ1200万円の格安で募集されたとなると、「何か裏があるはず」と考える方が普通でしょう。

そして、そのディスカウントされた要因を、過去のレビューでは「父ノヴェリストの人気が地に落ちている」ことに求めています。実際、2020年度の種付け料は150万円まで低下しています。当然、その分だけ割り引かれた価格設定になることは常識的ではあるのですが、それだけでは1200万円の価格設定の根拠には不十分でしょう。

そこで、もう1つ低額募集された要因として考えらえるのが馬格です。募集時の測尺で管囲は19cmしかありませんでした。馬体の見栄えの割に脚元が細い印象でもあり、順調に体重が増加してしまうと、リスク化する可能性を感じました。

以下、上記の観点を含めて、なぜ今になって気になって来たのか、整理をして行きます。

■配合
まず、ノヴェリストが期待された程の産駒を残せていないことは間違いありません。過去のレビューでも書いた様に、「肝心のサンデー系牝馬との相性に優れなかった」と言うのも事実です。しかし、改めてノヴェリスト産駒の成功例を眺めると、獲得賞金3位のバラックパリンカの母アプリコットフィズと、10位コロンバスデイの母コロンバスサークルは母がマンハッタンフィズで同一です。即ち、本仔マンハッタンフィズの2018とバラックパリンカ,コロンバスデイは3/4同血の関係にあります。ノヴェリストとサンデー系牝馬の相性が悪い中で、この結果は特異的と言えるでしょう。従って、本仔の配合も一定の成功パターンに則ったものと考えることが可能です。

■フェデリコテシオの血統理論
次に、最近マイブームとなっているフェデリコテシオの理論を用いて、本仔の評価を行います。まず重要なことは2018年はノヴェリストのMAX活性期に相当していたことで、結果、2018年産のノヴェリスト産駒には強く父の影響が反映されることが想定されます。

但し、ここで難しい点は母系にあるLucianoの血もMAX活性であることで、ノヴェリストとLucianoの何れが優勢なのか判断することが出来ません。そこで、各々が優勢の場合について脚質と気性の継承元となる優先祖先を調べると、ノヴェリストが優勢の場合はノヴェリスト自身、Lucianoが優勢な場合はマンハッタンフィズが、本仔に類似した優先祖先と言うことになります。マンハッタンフィズに似た方が距離は短目になりますが、どちらしても本仔の脚質は芝の中距離以上となる可能性が高いことになります。

また、母系から得られる基礎体力値は64であり、優秀なレベルと判断されます。

■馬体
最新情報で馬体重は448Kgであり、管囲に見合わない程の巨大化のリスクは避けられた様に思います。ファーストインプレッションの時点から肩の角度が緩やかな点や、面積のあるトモは好感の持てるものでしたので、現在の成長状況は好ましい様に感じます。特に、個人的な評価ポイントとして脛の幅を重視しているのですが、本仔の脛は十分な幅を有しています。

あとは、もう少し筋肉の発達が目立ってくれると嬉しいのですが、ステイヤーを目指すのであれば、ムキムキの筋肉はむしろ邪魔になるとも考えられます。但し、絶対的なスピード不足はNGですので、その点の注意は必要です。

■歩様
いまいち固い印象で、前肢後肢共に可動域が広いとは言い難い様に思います。こちらの歩様分析でも評価値14.9でいまいち冴えません。長距離をこなすにはもっとストライドが伸びて欲しい印象です。

■気性
現在の本仔の最大の懸念材料は気性ではないかと考えています。直近の更新情報では、ハミをしっかりとって走っていることが示されており、これは高く評価するところなのですが、一方で暴走気味である気配も感じます。改めて過去のコメントを確認すると、「気性が幼い」「落ち着きがない」「気持ちが先走る」「好戦的」などの気性的な危うさを示すコメントが続いています。気性的な折り合いがつかない限り、ステイヤーを目指すことは不可能ですので、この点は今後も注意をしてゆく必要があるでしょう。
なお、本仔は5代アウトブリードですので、気性面の危うさを抑える意味で、一定の効果が期待できます。

■厩舎
もう1つの懸念材料は預託先厩舎です。高橋康之厩舎はリーディング100位前後に低迷が続いています。この実績を見る限り、厩舎力を望むのは難しいと考えるべきでしょう。只、1つ都合の良い点として挙げられるのは、芝の短距離から長距離まで平均して勝ち星を挙げている点です。厩舎によっては意固地なまでに長距離を使わないケースも散見されますが、高橋厩舎については「長距離を使うことは厭わない」ものと想像します。

■おわりに
募集時点ではその良血であるが故に「訳ありではないか」と疑念を持たれた本仔ですが、ここまでの育成過程を見る限り、そのリスクも随分軽減されてきた印象を受けます。依然として不安材料が残るのも事実ですが、「芝の長距離に適性がある」と言う点は大いに夢が広がる特徴でしょう。博打感は拭えませんが、それもこの募集価格ならば許せる範囲とも思えます。単純に「父ノヴェリストが嫌がられて募集価格が抑えられた」と言うことであれば、案外と美味しい募集馬に化けるかもしれません。あと、左後一白と言うのも、オカルト好きには見逃せません。

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