2019年度グリーンF募集馬の第一印象④

2019年度グリーンF募集馬の第一印象の最終回です。(前回はこちら

今回も前回に引き続き、残る募集馬についての第一印象を書き留めて行きます。


14.マンハッタンフィズの2018

父  :ノヴェリスト
母父 :サンデーサイレンス
性別 :牝馬
毛色 :青鹿毛
FN :16号族
誕生日:2018/03/21
生産 :社台ファーム

近親にグリーンファーム所属馬のいない牝系です。本仔の母母サトルチェンジから連なる牝系で、叔父にマンハッタンカフェのいる豪華な一大牝系です。特に、本仔の兄姉にはアプリコットフィズ,クレスコグランド,ダービフィズの重賞勝馬が3頭もいる様に、グリーンファーム募集馬としては抜きんでた良血と言うことが出来ます。ちなみに、本仔が誕生した時点での母年齢は17歳であり、超高齢出産にはギリギリの年齢です。

この様に極めて優良な母系を持つ本仔ですが、問題は父ノヴェリストです。ヨーロッパのGⅠレースで5勝を上げたアイルランド産のノヴェリストは、社台グループの手によって輸入され、社台スタリオンにスタッドインしました。しかし、産駒の成績は散々たる状況で、社台グループの優良牝馬を多数配合したにも関わらず成績は冴えず、2016年産の世代別サイアーランキングも19位に低迷をしています。このままではワークフォースと同様に本国に送り返されるのも時間の問題かもしれません。特に、配合的にサンデーサイレンスとの組み合わせに成績が伴わないことから、本仔についても母系の良血を無駄にした残念な配合としか思えません。

上記の通り、人気を博すとは考えられない背景から、これだけの良血にもかかわらずグリーンファームから募集される流れになったものと想像しています。しかし、グリーンファームでもノヴェリスト産駒は過去に3頭が募集された実績があり、その何れも募集価格に見合った活躍が出来ていません。既にノヴェリスト産駒については食傷気味であると思います。「馬体の出来が特段に素晴らしい」と言う様な加点要素が無い限り、いかに母の仔出しが良いと言えども本仔が人気化するとは思えません。

15.ノーブルリーズンの2018

父  :アジアエクスプレス
母父 :ネオユニヴァース
性別 :牝馬
毛色 :栗毛
FN :19号族
誕生日:2018/04/01
生産 :ノーザンファーム

今年のノーザンファーム生産馬×3頭の中の1頭です。近親にグリーンファーム所属馬は見つかりません。カメリアローズから連なる牝系で、叔父にはデイリー杯2歳S(GⅡ)2着のダローネガ、フジTVスプリングS(GⅡ)3着のディキシーナイトのいる華やかな牝系です。母ノーブルリーズンも新馬勝ちを含む2勝を上げており、基本的に早期始動が可能な牝系であることは確かでしょう。なお、本仔はノーブルリーズンの初仔であり、兄姉に勝ち上がり実績はありません。

興味深いのは新種牡馬の父アジアエクスプレスで、「非社台系のマイナー種馬を配合したノーザンファーム生産の仔馬」と言うのは、グリーンファームからコンスタントに募集されるパターンです。
只、アジアエクスプレス自身の期待値は相当高いと思っています。ダート血統でありながら、初ダートで2歳王者の座を奪い去ったスピード能力は、確実に産駒に遺伝する考えており、重厚な米国産種牡馬とは一線を画するものがあると思います。牝系から見る限り脚質は芝適性だと思うので、出資判断に際しては、芝向きのスピードがあることを見極めたいところです。

16.レイヨンヴェールの2018

父  :エイシンフラッシュ
母父 :ゴールドアリュール
性別 :牡馬
毛色 :青鹿毛
FN :13号族
誕生日:2018/04/15
生産 :社台ファーム

母レイヨンヴェールは元グリーンファーム所属馬で、降級を含めてダートで3勝を上げています。その3勝は何れも東京のダートマイルで上げたもので、正に東京ダート専用機と呼ぶにふさわしい内容でした。そして何より、6歳で引退するまでに全32戦を走りぬき、5000万円を超える賞金を稼いだことは称賛に値します。なお、本仔はそのレイヨンヴェールの初仔になります。

一方、父エイシンフラッシュについては種牡馬成績が冴えません。産駒がデビューして今年で3年目に入りますが、最も獲得賞金の多いジェシーでも準オープン止まりで、重賞を制するどころか古馬のオープン馬すら出せていません。この様な成績では流石に社台スタリオンに留まることは不可能で、今年からレックススタッドに移籍しています。種付料も100万円に減額されました。

然したる活躍馬が出ていないことから、配合上のポイントは明らかではないのですが、それでもMr.Prospectorのクロスを有する産駒が成績不振であることは明らかです。そして残念なことに、本仔はそのクロスを有しています。成績の冴えない種牡馬に加えて配合上も不安があるとなると、母馬に出資されていた方は別にして、ちょっと出資には二の足を踏んでしまうかもしれません。

17.ゼマティスの2018

父  :エイシンフラッシュ
母父 :ゼンノロブロイ
性別 :牡馬
毛色 :黒鹿毛
FN :B3号族
誕生日:2018/03/13
生産 :ノーザンファーム

今年のノーザンファーム生産馬×3頭の中の1頭です。近親にグリーンファーム所属馬は見つかりません。アコースティクスから連なる牝系で、叔父にダービー馬ロジユニバースのいる血統です。母ゼマティスは未勝利のまま現役を終えており、本仔はその6番目の仔になります。半兄スラッシュメタルは先日2勝目を上げて、2勝クラスに進みました。

今年の募集馬は種牡馬の被りが少ないのが特徴ではあるのですが、唯一の複数募集された種牡馬がエイシンフラッシュと言うのは、残念過ぎると言うか、グリーンファームのアウトレット感を体現していると思います。レイヨンヴェールの2018の項で述べたように、エイシンフラッシュの種牡馬としての能力は社台グループから見放されている上に、本仔もMr.Prospectorの残念クロスを有しており、配合的にも期待感がありません。募集価格はそれなりに安価になると予想しますが、ノーザンファーム生産馬の牡馬と言えども個人的に薬指は動かないと思います。

18.ネーラペルレの2018

父  :ネオユニヴァース
母父 :キングカメハメハ
性別 :牡馬
毛色 :黒鹿毛
FN :4号族
誕生日:2018/04/16
生産 :那須野牧場

2019年グリーンFから募集して欲しい仔馬」のシリーズで採り上げた仔馬です。詳細はこちらを参照して下さい。複数のGⅠ馬を生み出した父ネオユニヴァースは種牡馬としても成功を収めましたが、年齢と共にその人気は落ちており、現在は社台スタリオンからも移籍されています。
只、それでも産駒からは一定の活躍馬が出ており、今なお侮れるものではありません。特に、本仔はネオユニヴァース産駒としては絶対条件の牡馬である上に、配合的にも理想形と言えますので、スペック的には相当高いものがあると評価しています。

一方、本仔の一つ上の半姉(父ダノンシャンティ)は昨年のオータムセールに上場されましたが、僅か360万円の値しかつけられていません。配合的に評価ができるとは言え、父ネオユニヴァースの人気は下降線にありますし、母ネーラペルレ自身も昨秋の繁殖馬セールで売却されていることから、那須野牧場側の評価も低いと考えられます。これらの観点から、募集価格は自ずと安価になると予想しますが、個人的にはそれだけに大穴として積極的に狙ってみたいと考えています。

19.オープンユアアイズの2018

父  :ローエングリン
母父 :ヴィクトワールピサ
性別 :牝馬
毛色 :栗毛
FN :7号族
誕生日:2018/02/18
生産 :社台ファーム

海外GⅠを制した母母アーヴェイは繁殖牝馬として輸入され、ディープインパクトを中心に優良な種牡馬が配合されました。本仔の母オープンユアアイズ(父ネオユニヴァース)はその2番仔で、グリーンファームから募集され3戦目で順調に勝ち上がりを決めましたが、そこで屈腱炎を発症してしまい、惜しくも引退をすることになりました。ある意味で、「グリーンファームに来る良血馬は何かしら訳あり」を実証してしまったと言えないこともありません。

本仔の父ローエングリンはGⅡを4勝した活躍馬で、種牡馬としても早々に皐月賞馬ロゴタイプを出しました。その後は少し落ち着いてしまいましたが、それでもカラクレナイ,ハッピーグリンと言った渋い活躍馬を近年でも出しており、決して侮れるものではありません。

ここで興味深い点はオープンユアアイズに敢えて社台スタリオン外のローエングリンを配合した意図だと思います。本仔の1つ下オープンユアアイズの2019にはローエングリン産駒のロゴタイプが配合されたことから、プロの視点から見たときにオープンユアアイズにローエングリンの父系を配合することは何らかの根拠があるものと想像できます。ちなみに、オープンユアアイズの2019は先日のセレクトセール当歳に上場されましたが、競り値は伸びること無く1000万円で落札されています。


以上、2019年のグリーンファーム全募集馬についてファーストインプレッションを書き終えましたが、最後に現時点での個人的な注目馬について順に5頭を挙げておきます。

◎:モンシュシュの2018
○:ツルマルオトメの2018
▲:ネーラペルレの2018
注:トゥルーストーリーの2018
△:オールドパサデナの2018
穴:クーデンビーチの2018

2019/07/14 追記:昨年は6頭ピックアップしていましたので、合わせる形で1頭「クーデンビーチの2018」を穴として追加しました。

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