GFナスノシベリウスの2021に出資

出資馬について、その判断事由を備忘録として残しておくシリーズですが、最新の1頭が書けていませんでしたので、遅ればせながら公開します。

まず、このナスノシベリウスの2021は募集開始時点では出資を決断することが出来ませんでした。その最大の理由は、本年のグリーンファーム募集馬の個人的な最高評価馬がアンデスクイーンの2021であったことにあります。本馬とアンデスクイーンの2021は何れも4000万円の募集価格でしたが、アンデスクイーンへの応募を決めたことから、予算的に本馬への出資は不可能となってしまいました。

これに対し、遅れながらも本馬への出資を決断した理由は、「アンデスクイーンの2021への出資が叶わず予算が浮いたこと」「募集開始後の馬体が急成長したこと」「半兄ハーツコンチェルトが鮮烈デビューを飾ったこと」等が挙げられます。そして何より、「残口が急減して様子見が不可能になった」ことから、最終的な出資決断に至りました。


■種牡馬
父は2023年度に初年度産駒のデビューするブリックスアンドモルタル。詳細はこちら(キングスミールの2021)のレビューを参照のこと。

■牝系
「本馬の最大の魅力は牝系にある」と考えて間違いありません。母ナスノシベリウスは米国から輸入された外国産馬で、降級を挟んで500万条件を2勝する成績を残しました。そして、何よりも輝くのが産駒の成績。初仔ナスノシンフォネーがホープフルS(G1)で5着の成績を残したことを皮切りに、本仔の5頭の兄姉は全て中央で勝ち上がりを決めています。

加えて、1つ上のハーツコンチェルトは新馬戦を8馬身差で勝利する鮮烈デビューを果たし、早くも「来年のダービー候補」に目されています。もし、ハーツコンチェルトが下馬評通り重賞を手にすることが出来たならば、ナスノシベリウスが名牝としての地位を確立することに疑いはありません。そう言う観点からすれば、ナスノシベリウス産駒に出資が出来るのは本仔が最後となるかもしれません。

■配合
ナスノシベリウスはハーツクライと配合することで、特に優れた産駒を世に出して来ましたが、そのハーツクライは2020年に種牡馬を引退しており、本仔の父はブリックスアンドモルタルに変更されています。ブリックスアンドモルタル産駒が未出走であることから、配合上のポイントは見出されていませんが、父ストームバード系✕母父Unbridled’s Songの組み合わせからはエーシントップが出ていますので、全くの失敗配合となる蓋然性は低いと考えられます。

■測尺
募集時点(8月5日)の測尺は以下の通り。

体高:153.0 胸囲:173.0 管囲:20.4 体重:425

胸囲と体高が少し小さい所が気になりますが、本仔は5/1の遅生まれなので、相応の割引は可能であり、一口馬主DBにて提供されるツールを用いると、デビュー時予測体重は494Kgと予想されます。実際、10/28時点では472Kgまで成長を遂げており、これを入力データにした予測体重は500Kgとなります。何れにしても、馬格面での不安は無用であり、仮にダート適性であっても十分に対応可能と考えられます。

■駐立写真

上記計測は募集時の駐立写真を対象に行ったもので、気持ち胴長で、脚長は短目に見ます。これを見る限り、適性距離はマイル以下に見えるのですが、この1か月後に公開された写真をみると、若干脚が伸びた印象を受けました。

一方で全体のバランスを見ると、背中が短く前駆とトモの幅が広くなっており、これは高く評価したいポイントです。芦毛なので筋肉の状態の確認が難しいのですが、特に前が立派に映ります。また、個人的に重視している、腰角付近の筋肉にも張りが認められて好評価です。

何れにしても、兄姉と比較すると距離適性は短目に映り、どちらかと言うとパワー型に寄った体型をしています。

■歩行動画
本仔への出資を即断できなかった理由の1つが歩様でした。後肢の可動域が若干狭い感じで、特に後方への振れ角が足りない印象です。一方、前方への踏み込みに関しては標準的であり、一定の筋力は身に着いていると思われます。

歩速は早く、キビキビと動けていますので、ストライドで走るよりもピッチで走るタイプと予想され、この観点から見ても、兄姉よりも距離適性は短い可能性を感じます。

■誕生日と母年齢(参考1参考2
本仔の出産時の母年齢は12歳で、参考1に示す通り、高成績の期待できる出産年齢に該当します。更に、2代母の出産年齢は10歳であることから、母との平均年齢は11歳となり、参考2に示す通り、僅かにストライクゾーンから外れるものの次善レベルの好条件です。

■生産と育成
本仔はハシモト牧場の生産馬ですが、育成は兄姉と同じくノーザンFに依託されます。グリーンファームの那須野系生産馬からは、毎年1~2頭がノーザンFに育成を依頼されますが、ここに選ばれる仔馬は基本的に「クラブの期待馬である」と考えて差し支えありません。

■厩舎
預託先厩舎は美浦の武井厩舎。ナスノシベリウスの仔は全て武井厩舎に預託されており、厩舎を代表する牝系となっています。半兄ハーツコンチェルトが期待通りの成績を残せば、この関係がより強固になることは間違いありません。牝系の特徴をよく理解されている厩舎に託されることは本仔にとってもメリットは大きい筈です。

武井厩舎は有力馬主の預託馬の引き上げがあったことで、リーディングの低迷が続きましたが、今年はV字回復を果たしています。個人的に重視する指標である、「クラブ馬勝ち上がり率=44%、クラブ馬回収率=103%」は、もう一歩の成績ですが、これも追って改善して来ると思われます。未だに中央競馬での重賞勝ち実績の無いことが不安視されることもありますが、それも時間の問題かと思います。

■価格
募集価格は4000万円。グリーンファームの募集馬としては相当な高額募集馬になりますが、半兄ハーツコンチェルトの4800万円には及びません。この相対的な価格差が、本仔の評価を下げる一因となったかもしれません。

■テシオ理論
父ブリックスアンドモルタルの活性値は6であり、当該年から劣勢期を抜けています。一方、母父Unbridled’s Songの活性値は7あることから、優先祖先は母ナスノシベリウスとなります。この様にテシオ理論的には、ナスノシベリウスの産駒はUnbridled’s Songの影響が大きく、基本的には母系似の産駒が生まれると解釈されます。唯一の例外が2番仔のナスノフォルテですが、本仔のみダート色が強く出ている点が興味深い所です。

一方、基礎体力値は38%ですが、前述の通り、本仔の母系の年齢は高条件を満たしており、基礎体力値は無視して構いません。

■余談
最後にもう一つ、注目しておきたいのが本仔の毛色です。本仔の芦毛は母系から由来するものですが、ナスノシベリウス産駒で芦毛に出たのは本仔が初めてです。以前調査したデータですが、競争馬の成績を毛色別に調査した時、「芦毛馬の成績が最も優れる」と言う結果が出ています。さらに芦毛馬の中でも「母系から引き継いだ芦毛馬が高い成績を残す」と言う結果が得られており、本仔はこのパターンに該当しています。

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