競馬と税金の話

今年の確定申告の期限も残すところ僅かになったところで、自分もようやく申請書の準備が終わりました。確定申告と言うと経験の無い人には敷居が高い印象を与えますが、適切な知識があれば節税に繋がるケースが多々ありますので、出来るだけ知っておいた方が良いと思います。例えば「医療費の控除」や「ふるさと納税」の制度は、確実に活用したい制度です。
..と言う所で、今回は競馬と税金の話をネタに採り上げたいと思います。

※ 今回のネタは納税に関わる内容になります。出来るだけ誤りの無いように、注意して書いているつもりですが、解釈に間違いのある可能性もあります。最終的な判断は各自で行って貰える様、お願い致します。

1.一口馬主と確定申告

まず始めに、「一口馬主の出資者は確定申告すると収めた税金が戻ってくる可能性がある」と言うことです。その一例として、確定申告によって税金が還付される条件は以下の通りです。

1.持ち馬がレースに出走して得た賞金から源泉徴収金がある。
2.年間の一口馬主の収支がマイナスである。

ある馬が賞金を稼いで、出資金を上回る様になると(黒字化すると)そこからの賞金は事前に源泉徴収金が引かれる様になります。しかし、複数の馬に出資していてトータルの収支が赤字であれば、税金を払う必要はありません。即ち、賞金から源泉徴収された税金は支払不要であるため、確定申告によってこれを取り戻すことが可能です。

具体例として、グリーンファームの場合には1月に確定申告用通知書と言う書類が送られきますので、これを確認すれば税金の還付が受けられるかが判ります。雑所得の欄がマイナスで、源泉徴収額の欄に金額が記載されていれば、この源泉徴収された税金を確定申告で取り戻せることになります。

さらに、一口馬主の収益は雑所得に分類されますので、その他の雑所得と合算することが許されます。即ち、複数の一口馬主クラブを掛け持ちしている会員の場合は、全てのクラブの収支を合算した上で、過払いの税金を取り戻すことが可能です。

2.雑所得の通算

ここまでの話のポイントは、「一口馬主の収益は雑所得に分類できること」と、「雑所得はその他の雑所得と合算して申告できる」と言う2点にあります。ここで、その他の雑所得としては、多くの副業と言われる物がこれに該当します。例えば、ヤフオクやメルカリの売却益などもこれに当たります。

重要な点は「全ての雑所得は通算できる」と言う点にあり、副業の収益がある人は雑所得として税金を納める必要がありますが、もし一口馬主で赤字を出している場合は、その損失分を副業の収入から相殺することが出来ると言うことです。即ち、一口馬主の損失分だけ副業から引かれる税金を節税できます。

例えば、所得税率20%の人がヤフオクで100万円儲けた場合、雑所得100万円×税率20%=20万円を納税する義務がありますが、もしこの人が一口馬主の年間収益が-20万円の損失であれば、トータルの利益は100万円-20万円=80万円に減額できるので、必要な納税額は80万円×20%=16万円で済むことになります。

ここで最近のホットな話題として仮想通貨の確定申告の話があります。仮想通貨によって得られた利益の納税方法は、昨年秋のタックスアンサーにて、雑所得に分類される方針が明確に示されました。仮想通貨で一儲けした人は、正しく納税をする必要がありますが、前記例と同じく、一口馬主で赤字を出しているならば、収める税金を減らすことが可能です。この節税分は、1項の源泉徴収分の還付よりも大きくなる可能性が高いので、押さえておきたいポイントです。

3.馬券裁判と確定申告

さらに、雑所得の話を発展させると、巷を騒がせた「馬券裁判の話」に行き着きます。配当金に対する課税と必要経費を争った裁判としては、卍氏の裁判が有名ですが、その後も同種の裁判が全国で進行しています。未だに解釈上の不明確点が多く、判断に迷うところが大きいのですが、確実に言えることは以下の通りです。

 ・継続的な利益活動と認められる馬券の購入によって得られた利益は雑所得に分類される。
 ・上記雑所得を得るために要したハズレ馬券は必要経費として認められる。
 ・継続的な利益活動と判断できない馬券の購入によって得られた利益は一時所得に分類される。
 ・上記一次所得を得る際に発生したハズレ馬券は必要経費としては認められない。

つまり、「馬券の購入が利益活動と認められるのであれば外れた馬券代金をその他の雑所得から減額できる」ことになります。例えば、ビットコインの売却で100万円儲けのあるひとが、競馬で200万円損していれば、雑所得は-100万円となり、雑所得に対する納税の必要は無くなります。

これが許されるのであれば、かなりの節税に繋がるのですが、問題は「利益活動として認められる馬券の購入の条件が明確にされていない」点にあります。これまでの判例から、「殆どのレースに対して網羅的に馬券を買っていること」が条件とされていますが、予想方法については問われていません。最初に出た卍氏の最高裁の判例では、「コンピュータを使った自動投票」であることが条件の様に伝わりましたが、昨年12/15に出た最高裁判決ではコンピュータを使わずに人間系で予想していたケースでも利益活動と認められています。一方で、昨年12/20の最高裁判断は上告を棄却して、被告の反論は退けられています。

この3つ目の事例と前2例との違いがどこにあるのか明確にされていない点が問題なのですが、前2例が多額の収益を上げていたのに対し、3例目はトータルの利益がマイナスだった点が、継続的な利益活動と認められない原因であった可能性があります。

「儲けが出た場合だけ利益活動と認める」と言ことであれば、自分的には納得の出来ない判断です。しかし、もしこれを認めてしまうと、先の例の様に、馬券の負けで他の雑所得の収入をキャンセルすることが出来てしまうこととなり、国税局にとってかなり都合の悪い事態となることが容易に想像できますから、なにがなんでもこれだけは認めないのではないかと思っています。

何れにしても、馬券の収益の取り扱いが不明確な現在の状態では、真面目に馬券の儲けを雑所得として申請し、納税したいと考えても、雑所得として認められないケースのリスクがあまりにも大きすぎますので、現実的に申告することが出来ません。そもそも馬券は最初から控除金の中に税金が含まれていますし、馬主への賞金にも税金が掛かります。その上さらに、馬券の収益に対しても税金を掛けることは2重課税の可能性が高く、そこも含めて小手先ではなく抜本的な法整備を行うべきだと思います。カジノを解禁するもの良いですが、公営ギャンブルの税制を妥当性のあるものにすることも、併せて実施して貰いたいところです。

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