歩様の定量化について考える④

「歩様の定量化について考える」の一連のシリーズの続きです。<<前回はこちら>>

前回は過去に求めた歩様分析値について、その成績評価を実施し、さらに現2歳馬についても7頭をピックアップして歩様分析を行いました。今回はその続きとして、グリーンファーム2歳馬全数の歩様分析を実施します。ここで、本論に進む前に2つの見直しを実施します。

■呼称の変更
歩様を定量的に評価しようとする本試みですが、その分析値についてこれまでは「歩様分析値」と呼称していました。しかし、一口に”歩様”と言っても意味が広いことから、今後は「可動域指数」の呼称に見直します。

■シネマソングスの追加
ここで取り扱う「可動域指数」とは、グリーンFの古馬準オープン以上に活躍をしたグリーンF所属馬の肩角、前肢角、後肢角を調べ、その3値の分布特徴との類似性を指数化するものです。今回の集計では参照側データの中に新たにシネマソングスを追加した上で、全馬の「可動域指数」を再計算しています。

具体的に参照側データとしたのは、「ブランドベルグ・マキシマムドパリ・パラペーニョペパー・サザナミ・ボールライトニング・レインボーフラッグ・セネッティ・アンデスクィーン・サムシングジャスト・シネマソングス」の10頭になります。この10頭について、前肢角・後肢角・肩角の測定値と可動域指数は以下の通りとなります。

前肢角 後肢角 肩角 可動域
指数
ブランドベルグ 46.0 44.0 42.0 0.35
マキシマムドパリ 48.0 43.0 44.0 1.28
パラペーニョペパー 43.0 43.0 39.0 3.49
サザナミ 48.0 42.0 45.0 2.11
ボールライトニング 49.0 43.0 43.0 2.45
レインボーフラッグ 47.0 39.0 41.0 6.29
セネッティ 43.0 38.0 44.0 7.62
アンデスクィーン 45.0 45.0 40.0 1.90
サムシングジャスト 44.0 46.0 41.0 3.26
シネマソングス 46.8 43.3 44.0 1.24

レインボーフラッグとセネッティの2頭に付いて、他馬と比較して指数値が大きく出ていますが、これは後肢角が明らかに他馬よりも小さいために、全体に対する類似性が低く出たものと考えられます。

■全数調査結果
続いて本論である全数調査結果を示します。2018年以降のグリーンファーム募集馬について、可動域指数を調査した結果を以下に記します。参照側にシネマソングスを追加したことで、以前の評価値から多少の変動が見られますが、極端な変化はないと思います。
なお、期初募集時に動画が公開されなかったロンドンデリーエアとルーチェビアンカについてはここに含まれません。

順位 馬名 前肢角 後肢角 肩角 可動域
指数
1 ジャックポットマン 47.2 44.1 41.9 0.9
2 スズナミ 46.8 42.4 40.9 1.9
3 エレダール 46.7 45.5 43.0 2.2
4 ベルポエジー 48.0 40.8 42.4 2.4
5 ムーンリットナイト 46.6 46.3 42.6 3.0
6 ヴァロンダンス 49.6 43.2 43.2 3.3
7 ヴィクトールドパリ 49.6 43.4 45.0 3.8
8 フラッシュサンダー 47.7 44.4 45.3 4.3
9 ローズパレード 49.9 41.0 45.0 4.3
10 テネル 49.6 45.5 44.3 5.0
11 アレグロモデラート 50.4 43.7 43.1 5.5
12 シェンフォン 51.6 43.3 44.8 7.7
13 スィートプロミス 52.1 45.0 44.8 9.8
14 ダイヤモンドフジ 51.3 45.5 48.3 15.8
15 ロカビリークイッフ 52.7 49.9 46.5 23.7
16 ナウヴィクトリア 56.3 48.3 45.3 31.4
17 ラブシックボッサ 45.7 49.2 47.6 31.7
18 ウィズザタイムズ 58.1 48.0 45.0 41.9
1 ピスターシュドール 49.0 44.0 42.0 3.5
2 プリエヴェール 44.0 42.0 39.0 3.8
3 ジャンドゥーヤ 44.0 42.0 44.0 3.9
4 ローラーコースター 50.0 42.0 44.0 4.1
5 ローズボウル 44.0 46.0 42.0 4.3
6 ヴェイルオブナイト 50.0 45.0 43.0 5.0
7 ハリウッドルビー 49.0 45.0 41.0 5.3
8 パソロブレス 48.0 47.0 40.0 6.5
9 リリーブライト 51.0 46.0 45.0 8.5
10 モンキャドー 45.0 44.0 47.0 14.7
11 ワイドアウエイク 50.0 50.0 40.0 16.0
12 マンハッタンガデス 53.0 47.0 43.0 16.3
13 シエルドゥレーヴ 54.0 47.0 44.0 19.2
14 モントレージャック 52.0 43.0 40.0 21.2
15 フラワードラム 57.0 45.0 48.0 30.3
16 フェアリーテイル 54.0 46.0 40.0 30.7
17 ミラコロヴェルデ 46.0 46.0 52.0 53.5
1 グランマリアージュ 46.0 45.0 41.0 1.2
2 シュアゲイト 46.0 45.0 43.0 1.8
3 ノルトシュライフェ 47.0 45.0 44.0 2.8
4 ナショナルアンセム 48.0 41.0 42.0 2.9
5 ワンスウィートデイ 49.0 44.0 42.0 3.5
6 ファビュラスライン  49.0 44.0 42.0 3.5
7 ピンクレガシー 48.0 47.0 43.0 4.7
8 ルヴエルソー 49.0 44.0 41.0 5.2
9 フラワーエッセンス 48.0 47.0 44.0 6.0
10 エピデンドラム 47.0 50.0 41.0 10.2
11 ノワールフレグラン 52.0 46.0 46.0 11.8
12 ルヴァンヴェール 51.0 46.0 41.0 11.9
13 グレースオブナイル 48.0 46.0 47.0 12.7
14 スペラーレ 53.0 41.0 49.0 15.8
15 エールプレジール 49.0 50.0 45.0 16.6
16 サウンドトラック 48.0 52.0 44.0 21.7
17 エレガンテレイナ 54.0 49.0 48.0 27.7

現2歳馬について特徴的な点としては、過去2年と比較して可動域指数がマクロ的に小さな値に収まっていることが挙げられます。これは「現2歳馬は例年よりも馬質が上がった」と囁かれる、巷の評価を裏付けるものかもしれません。指数上位の募集馬は既に満口のケースも多いのですが、それでもジャックポットマン、ベルポエジー、ムーンリットナイトなどの最上位馬が依然として出資可能である点は、様子見派の方には要注目と言えるかもしれません。

■可動域指数の利用方法
最後に改めて、可動域指数の利用方法について整理しておきます。

まず、可動域指数はその計算ロジックから考えて、活躍するための十分条件ではありません。「可動域指数が小さい方が活躍する可能性が高まる」と認識することが適当です。基本的に可動域指数は他の判断基準と合わせて出資検討に用いるべきと考えます。

但し、活躍することが前提となる「高額募集馬については可動域指数の小さい馬を選択すべき」と言う判断基準は適切であるとも思います。

反対に、取り敢えず1勝が目標となる安価な募集馬については必ずしも可動域指数を重用する必要はありません。実際、可動域指数が大きくても勝ち上がっている募集馬は散見されます。(只、1勝止まりである蓋然性は高いかも..。)

また、可動域指数が小さい馬は基本的に柔らかく体が使えることを示していますが、筋力の強さを示唆するものではありません。従って、可動域指数の小さな募集馬への出資を行う場合は、併せて筋力の強さを見極めることが大切になると考えます。「体の柔らかさ」と「緩さ」を見誤ってはいけません。

次に、脚質が短距離適性であると想定される募集馬については可動域指数は重視する必要が無いかもしれません。可動域指数が小さい馬は「広いストライドで走れる馬」と考えられることから、マイル以上の距離適性が想定される募集馬に対して、有用になると考えられます。

最後に、可動域指数は動画の静止タイミングや測定ポイントの選択によって、値が左右される傾向があります。今回算出した数値も一定以上の誤差を含むものと考えて取り扱う必要があります。

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