競馬の数学(4)

競馬に関わる数学的な要素について考えた結果を、備忘録の代わりに書き残して行くシリーズの4回目です。(一覧はこちら
今回は、オッズの算出方法についておさらいします。

※ 数学的な意味で、厳密には不適切な表記があるかもしれない点はご容赦下さい。一方で、内容に関して本質的な間違いがありましたら、ご指摘を頂けますと大変助かります。


4-1.単勝オッズの算出

【設問】

馬Aに対する単勝の投票率が$Ra$であるとき、馬Aの単勝オッズ$Oa$を求めよ。このとき、JRAの払戻率を$δ$とし、同着は発生しないものとする。なお、JRAの払戻金算出の規定はここに記載の通りとし、JRAプラス10は考慮しない。

【回答】

$$\frac{δ}{Ra}$$

【証明】

まずレース全体の総投票金額を$Nu$とし、馬Aへの投票金額を$Na$とする。このとき、

$$Ra=\frac{Na}{Nu} … ①$$

である。

つぎに、JRAの規定により、払戻金の総額は次式で定められる。

$$(W+\frac{D}{n})\cdotδ … ②$$

ここでWは的中馬券への投票金額、$D$はハズレ馬券への投票金額、$n$は勝ち馬の数なので、

\begin{eqnarray}W&=&Na\\D&=&Nu-Na\\n&=&1\end{eqnarray}

を代入すると、

$$(Na-(Nu-Na))\cdotδ$$

となる。よって、この時のオッズ$Oa$は払戻金の総額を馬Aへの投票金額で除したものになるので、

\begin{eqnarray}Oa&=&\frac{(Na-(Nu-Na))\cdotδ}{Na}\\&=&δ\cdot\frac{Nu}{Na} … ③\end{eqnarray}

これに①を適用すると

$$Oa=\frac{δ}{Ra}$$

となる。

【補足】

本例は的中馬券が一通りの券種であれば成り立つので、単勝以外も馬連、馬単、3連複、3連単でも同様に成立する。


4-2.同着時の単勝オッズの算出

【設問】

馬Aと馬Bに対する単勝の投票率が、それぞれRa、Rbであるときに、馬Aと馬Bが同着1位になったときの単勝オッズOaとObを求めよ。なお、JRAの払戻金算出の規定はここに記載の通りとし、JRAプラス10は考慮しない。

【回答】

\begin{eqnarray}
Oa&=&\frac{δ}{2Ra}+δ\cdot\frac{Ra-Rb}{2Ra}\\
Ob&=&\frac{δ}{2Rb}+δ\cdot\frac{Rb-Ra}{2Rb}
\end{eqnarray}

【証明】

本例は4-1で勝ち馬の頭数を2頭にしたケースである。

まずレース全体の総投票金額をNuとし、馬Aと馬Bへの投票金額をそれぞれ$Na$、$Nb$とする。このとき、

\begin{eqnarray}
Ra&=&\frac{Na}{Nu} … ①\\
Rb&=&\frac{Nb}{Nu} … ②
\end{eqnarray}

である。

つぎに、JRAの規定により、配当金の総額は次式で定められるので、

$$(W+\frac{D}{n})\cdotδ$$

馬Aに対する払戻金の総額は、

\begin{eqnarray}
W&=&Na\\D&=&Nu-Na-Nb\\n&=&2
\end{eqnarray}

より次式で与えられる。

$$(Na+\frac{Nu-Na-Nb}{2})\cdotδ$$

従って、馬AのオッズOaはこの総額を馬Aへの投票金額Naで除したものになるので、

\begin{eqnarray}
Oa&=&(Na+\frac{Nu-Na-Nb}{2})\cdot\frac{δ}{Na}\\
&=&\frac{Nu+Na-Nb}{2}\cdot\frac{δ}{Na}\\
&=&δ\cdot\frac{Nu}{2Na}+δ\cdot\frac{Na-Nb}{2Na}
\end{eqnarray}

ここで①,②の関係を用いて上式を整理すると。

$$Oa=\frac{δ}{2Ra}+δ\cdot\frac{Ra-Rb}{2Ra}$$

同様に、馬BのオッズObは、

$$Ob=\frac{δ}{2Rb}+δ\cdot\frac{Rb-Ra}{2Rb}$$

となる。

【補足】

4-1と4-2の結果を比べると、4-2は単純に4-1の結果の$\frac{1}{2}$とはならない点に注意する。$Ra=Rb$の場合に限り、$\frac{1}{2}$となる。


4-3.複勝オッズの算出

【設問】

馬Aと馬Bと馬Cに対する複勝の投票率が、それぞれ$Ra$、$Rb$、$Rc$であるときに、馬A・馬B・馬Cの3頭が1~3着を占めた場合の、複勝オッズ$Oa$,$Ob$,$Oc$を求めよ。なお、JRAの払戻金算出の規定はここに記載の通りとし、JRAプラス10は考慮しない。

【回答】

\begin{eqnarray}
Oa&=&\frac{δ}{3Ra}+δ\cdot\frac{2Ra-Rb-Rc}{3Ra}\\
Ob&=&\frac{δ}{3Rb}+δ\cdot\frac{2Rb-Rc-Ra}{3Rb}\\
Oc&=&\frac{δ}{3Rc}+δ\cdot\frac{2Rc-Ra-Rb}{3Rc}
\end{eqnarray}

【証明】

本例の回答は4-2の例を3頭同着に拡張したケースと考えることが出来る。

まずレース全体の複勝の総投票金額を$Nu$とし、馬Aと馬Bと馬Cの複勝への投票金額をそれぞれ$Na$,$Nb$,$Nc$とする。このとき、

\begin{eqnarray}
Ra&=&\frac{Na}{Nu} … ①\\
Rb&=&\frac{Nb}{Nu} … ②\\
Rc&=&\frac{Nc}{Nu} … ③
\end{eqnarray}

である。

つぎに、JRAの規定により、配当金の総額は次式で定められるので、

$$(W+\frac{D}{n})\cdotδ$$

馬Aに対する払戻金の総額は、

\begin{eqnarray}
W&=&Na\\
D&=&Nu-Na-Nb-Nc\\
n&=&3\\
\end{eqnarray}

より次式で与えられる。

$$(Na+\frac{Nu-Na-Nb-Nc}{3})\cdotδ$$

従って、馬AのオッズOaはこの総額を馬Aへの投票金額Naで除したものになるので、

\begin{eqnarray}
Oa&=&(Na+\frac{Nu-Na-Nb-Nc}{3})\cdot\frac{δ}{Na}\\
&=&(\frac{Nu+2Na-Nb-Nc}{3})\cdot\frac{δ}{Na}\\
&=&δ\cdot\frac{Nu}{3Na}+δ\cdot\frac{2Na-Nb-Nc}{3Na}
\end{eqnarray}

ここで①,②,③の関係を用いて上式を整理すると。

$$Oa=\frac{δ}{3Ra}+δ・\frac{2Ra-Rb-Rc}{3Ra}$$

同様にしてObとOcを求めると、

\begin{eqnarray}
Ob&=&\frac{δ}{3Rb}+δ・\frac{2Rb-Rc-Ra}{3Rb}\\
Oc&=&\frac{δ}{3Rc}+δ・\frac{2Rc-Ra-Rb}{3Rc}\\
\end{eqnarray}

となる。

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