出資馬の選定指針 (4):歩様動画

現在の出資馬の選定指針について、備忘録として整理するシリーズの第4回です。今回は出資馬の選定において自分が最も重視している歩様動画について、自分なりの見所を整理します。(まとめページはこちら


出資馬の選定において、歩様動画は駐立写真と並んでスタンダートな情報ですが、駐立写真と比較して判断が難しい情報でもあります。恐らくそれは、歩様を定量的に評価することが困難であり、どうしても個人の感覚論を抜け出せず、解説の難しい点にあると想像しています。

斯く言う自分も、歩様の評価には悩むところが大きく、本稿の着手も延び延びになってしまいましたが、迷うところは迷うなりに現在の自分の評価ポイントを整理したいと思います

■評価対象

まず、評価の対象にする歩様動画についてですが、これは1歳募集時(概ね6~8月頃)に撮影された動画を使用します。募集馬はトレーニングに伴って競争馬の姿に変わって行きますから、成長した姿で評価するよりも、馴致開始前の状態(当歳時では不確定要素が多過ぎ)を評価した方が、より募集馬の素材としての優劣が判断し易いと考えています。

■可動域

判断の難しい歩様動画の評価において、比較的判り易いのは可動域の広さだと思います。競争馬の移動速度は1完歩の長さと脚の回転速度の積によって決まると仮定します。

移動速度=1完歩の長さ✕脚の回転速度

これを前提とすれば、1完歩の長さが1%広いことと、脚の回転速度が1%速いことは、移動速度に対しては同じ影響をもつことになります。

ちなみに、1馬身を2.4Mとすると、クラッシックディスタンスの1馬身差は移動距離に対して僅か0.1%の差でしかありません。すなわち、1完歩の幅が1%違ったら、2400Mでは10馬身もの差が付く計算になります。もちろん「常歩」と「襲歩」では違う筈で、単純な話ではないのですが、それでも「単純化したモデルでは僅かなストライドの差でも、大きな着差に繋がること」は留意しておく必要があります。

ここで問題となるのが「1完歩の測り方」です。まず、明らかなことは、「常歩において、前肢の歩幅と後肢の歩幅は同一」と言うことです。もしこれらが異なっていたら、前肢と後肢がぶつかるか、胴体が離れてしまいます。従って、「前肢と後肢の測り易い方の歩幅を図れば良い」と言うことになります。

そして現在の自分の場合ですが、後肢の角度を測ることで、これを代用しています。具体的には下図の通り、「後肢の蹄が返る寸前の管と地面の成す角度」と「着地した瞬間の管と地面の成す角度」を測定しています。

もちろん、管と地面の成す角度と1完歩の長さは同じものでは無く、飽く迄も簡易的な代替え手段に過ぎません。最終的には個々人が自分なりの測定方法を確立して、複数の対象馬を比較することが肝要です。

そして歩幅の測定とは別に、前肢についても前に振り出される際の角度に注意をしています。具体的には「前腕を前に振り出した際に最も地面との成す角度が小さい瞬間の値」で、下図に示す角度になります。

前肢の振り幅は、歩様動画を見て直感的に分かり易い要素であり、簡易的に可動域を判断する際に有用です。

なお、上に示した3枚の写真はYoutube上に公開されているアーモンドアイ(フサイチパンドラの15)の募集時動画をスクリーンキャプチャして測定サンプルにしたものです。アーモンドアイの可動域の広さが良く分かります。

■飛節のブレ、外向/内向、外反/内反

関節のブレと外向/内向は、正面または背後から撮影された歩様動画にて確認する項目です。これらは歩様動画で確認する要素としては比較的わかり易い項目であると思います。

まず飛節のブレについては背後から撮影した動画を見て確認します。持ち上げた脚が着地する瞬間の飛節に注目し、ここが「ガクッ」と振れる様子を「飛節がブレる」と称します。成長が遅く、関節の細い仔馬に多く見られる印象ですが、評価としてはマイナスです。

外向/内向は前肢ならば正面からの動画、後肢ならば背後からの動画で確認します。振り出される脚が真っ直ぐに出るのが正常な歩様で、これが外に孤を描くのが外向、内に孤を描くのが内向です。只、多くの競争馬には多少なりとも外向の傾向が見られますので、過度に懸念して減点評価をするよりは、極端なケースのみを回避すれば良い様に思います。

一方で、「外反(X脚)/内反(O脚)については関節や靭帯への弊害がある」とされています。ギブスや手術による対処が行われる様ですが、基本的に故障に繋がる欠陥であることから、出資は避けるのが無難です。

■筋肉の質感

歩様動画を評価する上で最も重要であり、かつ感覚的で難しいのが筋肉の質感の見極めです。要は、「負荷を掛けることで強化される筋肉なのか、鍛えても強くならない筋肉なのかを見極めたい」と言う話ですが、これについては自分も判断基準を定めることが出来ずにいます。

往々にして耳にするのは「しなやかな筋肉」と言う表現ですが、何を以てこれを判断することが出来るのか、その解説の類は見たことはありません。そこで、ここでは現在の自分が行っている評価ポイントについて、備忘録として記載することにします。(あくまでも暫定的なもので、将来的に変わって行く可能性は普通にあり得ます。)

筋肉の質の見極めてとして自分がチェックしているのは、歩様動画における下図に示す部位の筋肉の振動の様子です。

1歳募集馬の歩様動画であることを前提に、硬すぎる筋肉は筋肉に振動が見られず、逆に緩過ぎて強化に耐えない筋肉は振動がだらしなくタルンタルンしています。自分が理想とするのは「プルルッ」とした弾力の感じる振動です。(「プル」でも「プルプル」でもなく、「プルルッ」が大切。) また、下側写真の様に後肢が伸び切った状態において、筋肉に弓を引き絞る様なイメージが見られる点もポイントです。(注:これは1歳募集時の動画に対する見所です。競争馬として鍛えられて緩さが抜けると状態は変わって来ます。)

なお、上図の写真はYoutube上に公開されているレインボーフラッグ(レインボーシーカーの13)の動画からキャプチャをしたものです。レインボーフラッグは元グリーンファーム所属のオープン馬で、64戦5勝の成績を残しました。オープン勝ちは出来ませんでしたが、大きな故障も無く64走を戦って2億3千万円を稼ぎ出した、正に無事是名馬です。

■歩速・リズム

歩速とリズムも歩様動画で確認すべき重要なポイントです。感覚的には「キビキビと歩けている」か否かを見所としており、ダラダラ、スロー、不規則なリズムの歩様はマイナス評価となります。

但し、「歩速が遅い=運動神経が低い」とは必ずしも言い切れませんので、あくまでも歩速は参考程度に留めるのが良いかもしれません。一方で、不安定なリズムは馬体のバランスや脚部の動きに問題を抱えている可能性があり、注意が必要と思います。

上の動画はYoutube上に公開されている元グリーンファーム所属のオープン馬、サムシングジャスト(ツルマルオトメの16)の募集動画です。過度に歩速の遅さを懸念してしまうと、(自分の様に)出資のチャンスを逃すことになってしまいます。歩様動画から可動域の広さと筋肉の質感の良さは見て取れますので、1つの観点に囚われてしまうことの危うさを示す例と言えるでしょう。

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