GFゴールドケープの2021に出資

今年のグリーンファームの出資馬の2頭目はゴールドケープの2021です。以下、その出資判断に至った事由を備忘録として記載します。

具体的な評価について語る前に、先ずは背景の説明が必要となるのですが、ポイントはエイシンバンバの2021の存在にあります。特別提供馬であるエイシンバンバの2021に申し込みを行うためには、同時に2口以上の出資申込を行う必要がありました。そして、その1口はアンデスクイーンの2021で即決することが出来たのですが、もう1口を決めなければなりません。

基本的にアウトレット感の漂うグリーンファーム募集馬への出資を判断するには様子見を行うことが肝要ですが、今回の様に早期決断が求められる場合は、どうしてもリスク要素の少ない募集馬を選ばざるを得ません。言い換えれば、高額募集馬・馬格の小さな募集馬・歩様の怪しい募集馬・手術歴のある募集馬・問題癖の認められる募集馬、等は基本的に回避したいところです。

もちろん、価格が抑えられている募集馬には何らかの減点要素が存在するワケで、「懸念材料の全く無い募集馬はいない」とも言えるのですが、そこを何処まで許容できるかが出資判断のポイントとなってきます。


■種牡馬
父ヴィクトワールピサはG1を3勝した活躍馬で、中でもドバイワールドカップを制したことでその名を馳せました。引退後は大きな期待をされて社台スタリオンにスタッドインし、初年度から桜花賞馬ジュエラーを輩出しましたが、その後は期待ほどの産駒を残すことが出来ず、2018年度からはブリーダーズスタリオンに移籍。さらに、2022年からはトルコへの輸出が決定しています。2021年度は種付けを行っていないことから、ヴィクトワールピサの日本生産馬としては本仔が最後の世代となります。種付け料は受胎条件で150万円でした。

■牝系
3代母レディオブチャドはアイルランドからの輸入繁殖牝馬で、本仔の祖母ジュエルオブナイル、叔母グレースオブナイル、母ゴールドケープはグリーンファーム所属馬でした。ジュエルオブナイルは小倉2歳S(G3)を含む4勝を挙げ、ゴールドケープはフィリーズレビュー(G2)の3着から桜花賞への出走を果たしました。何れも、2歳時から良績を残しており、早熟傾向の牝系と考えることが出来ます。

■配合
母父ワークフォースの産駒は現状で数が少なく、父ヴィクトワールピサとの配合例も存在しません。ワークフォース産駒は総じてスピード能力に欠ける傾向がみられ、日本競馬における種牡馬としては成功を収めることが出来ませんでした。例外的な成功パターンはスピード能力の高い牝系と組み合わせた場合で、ゴールドケープはこれに該当するパターンと言えます。ワークフォースの血が母父に入った時の影響は未知数ですが、本仔の牝系は基本的にスピード能力に優れることから、ワークフォース的な重苦しさは抑制されるものと思います。

一方、種牡馬としてのヴィクトワールピサは典型的なフィリーサイアーとして認知されており、牡馬に出た本仔は条件から外れています。正直に言って、配合面から見た時の本仔のカタログスペックには目を引く部分が見つかりません。「人気化する要素を備えていないことから、競りに出されることなく、クラブに回って来た」と考えることも可能です。只、その割には募集価格が2000万円と高目に設定されており、「馬そのものの出来は悪くない」と言うことかもしれません。

ちなみに、現3歳~5歳の既出走のヴィクトワールピサ産駒に限定すると、牡馬の勝ち上がり率が44%に対し、牝馬は21%でしかありません。また、現5歳以下のオープン馬の数で見ても、牡馬の5頭に対して牝馬は一頭も現れていません。これらの事実を鑑みれば、ヴィクトワールピサのフィリーサイアーのイメージは、既に過去のものなのかもしれません。。

■測尺
募集時の測尺は以下の通り。

体高:158.0 胸囲:174.0 管囲:21.3 体重:467

胸囲こそもう少しあればベストですが、その他は申し分ありません。また、募集時の馬体重から予測されるデビュー時馬体重は520Kgと予想され、ダート馬としても十分にやっていける馬格です。

■駐立写真

適度な胴伸びのある割には背中が短くトモ幅があり、馬体のバランスとしては現状がベストです。これ以上背中が伸びで間伸びした体型になるのは避けたいところ。

脚長も十分あることから、距離適性は母系の短距離ではなく、中距離まで対応出来る馬体に見えます。

■歩行動画

可動域の極めて広い歩様が本仔の特徴です。これだけ歩幅の広い募集馬は珍しいレベルだと思います。前肢は大きく前から出されていますし、飛節は後方まで伸びて地面を捉えています。そして何より、踏み込みが深いところを高く評価しました。一見したところでは、筋肉の目立つ馬体ではありませんが、これだけシッカリと踏み込めるのであれば、一定の筋力は身に着いている様に思います。

一方で、本仔への出資に当たっての最大のリスク要素が、「緩い繋ぎ」です。べちゃッとした感じで地面に着く感じで、最悪、球節を傷める可能性まで感じます。この繋ぎの緩さが成長と共に解消してくるのか否か、本来であれば様子見をしたい募集馬なのですが、冒頭に記載した事由から、ここは目を瞑って出資を決断しています。正にこう言うところが、アウトレットと揶揄されるグリーンファーム募集馬への出資の難しい部分かと思いおます。

只、自分がこのリスクに目を瞑る決断をしたのには1つの根拠がありました。それは母ゴールドケープの歩様です。以下の動画は母の募集時の歩様ですが、本仔ほどではありませんが、「緩い繋ぎ」は母からの遺伝的要素が強いものと思われます。2歳時から成績を残した母の繋ぎが同様の緩さであったと考えることで、本リスクは杞憂に終わる方に賭けました。

■誕生日と母年齢(参考1参考2
本仔の出産時の母年齢は7歳と若く、参考1に示す通り、高成績の期待できる出産年齢に該当します。更に、2代母の出産年齢も7歳であることから、母との平均年齢も7歳となり、参考2に示す通り、これは最も優れた条件に該当します。母系の年齢としてはこれ以上の条件は有り得ません。

■生産と育成
社台ファーム生産馬で育成も社台ファームで行われます。一時は生産馬の成績でノーザンFに水を空けられた社台ファームでしたが、昨年あたりからその差を急激に詰めています。これには育成牧場に新設された坂路コースの存在が無視できません。屋根付き坂路でこそありませんが、周回コースで乗り込みが行われてきた過去の育成とは天地の差があります。現2歳馬の育成コメントを参照すると、コンスタントに週3回の坂路入りが行われており、BTCの坂路を利用する育成牧場の登坂本数とは比較にならない乗り込み量を実現しています。

■厩舎
預託先厩舎は美浦の林厩舎。グリーンファームからは本仔で4年連続の預託となり、関東では最も信頼関係の厚い厩舎の1つになりました。現在の厩舎リーディングは70位台ですが、年々成績を伸ばしていることは間違いなく、今年の安田記念ではソングラインで念願のG1勝利を達成しています。また、個人的に重視する指標である、「クラブ馬勝ち上がり率=40%、クラブ馬回収率=168%」は、勝ち上がり率こそあと一歩ですが、クラブ馬回収率は高水準に達しています。

■価格
募集価格は2000万円。牡馬ですが、兄姉の実績の無い初仔としては、少々高い印象が拭えません。只。物価上昇の影響からか、今年の社台系の募集馬は総じて価格がアップしており、やむを得ないところかもしれません。恐らく、例年であれば1800万円の募集になったのではと思います。

■テシオ理論
父ヴィクトワールピサの活性値は6であり、当該年から劣勢期を抜けています。但し、本仔の優先祖先は祖母のジュエルオブナイルで、母系似の産駒と言うことになります。ちなみに母ゴールドケープの優先祖先もジュエルオブナイルであり、これは好ましい一致と考えています。一方、基礎体力値は47%になりますが、前述の通り、本仔の母系の年齢は最上級の条件を満たしており、基礎体力値は無視して構いません。

さて、ここからはオカルトを前提に話をしますが、配合のところで述べたヴィクトワールピサのフィリーサイアー説と優先祖先の考え方に関係性を見出さずにはいられません。ヴィクトワールピサ産駒は現在の5歳馬以降でフィリーサイアーとしての傾向性を失っていますが、これがヴィクトワールピサが劣勢期に入ったタイミングと正に一致しています。「劣勢期に入ったことで父の特性が表に出難くなり、母系似の産駒が増えた結果、牡馬の活躍が増えた」と考えれば、テシオ理論的には興味深い符合となります。

■余談
繰り返しになりますが、本来ならば本仔は様子見をした上で出資を判断すべき募集馬でした。今回は外的事由から様子見を諦めることになりましたが、一方で、それは自分なりに根拠のある判断でもありました。本仔が期待通り活躍してくれたならば、自分の出資馬選定力にも少しは自身が持てますので、ここは何とか結果を出して欲しいと願っています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする