競馬の数学(1)

本シリーズでは、競馬に関わる数学的な要素について考えた結果を、備忘録の代わりに少しずつ書き残して行きたいと思います。なお、全体構成を考えた上で、投稿しているものではありませんので、体系的な物にはならないことをご了解下さい。取り合えず初回の今回は、「馬券を多点買いしたときのレース的中率」について考えてみます。

※ 数学的な意味で、厳密には不適切な表記があるかもしれない点はご容赦下さい。一方で、内容に関して本質的な間違いがありましたら、ご指摘を頂けますと大変助かります。


1-1.単勝2点買いの時のレース的中率

【設問】

A,Bの2頭の馬の単勝率がそれぞれ$P(A), P(B)$であるとき、この2頭の単勝馬券を同時に買った場合のレース的中率$Pr$を求めよ。但し同着は発生しないものとする。

【回答】

$$Pr=P(A)+P(B)$$

【証明】

まず、ここでのレース的中率$Pr$はAとBの何れか一方が優勝する確率$P(A\lorB)$と同意であり、$P(A\lorB)$は一般に以下の様に展開できる。

$$Pr=P(A\lorB)
=P(A)+P(B)-P(A\landB) … ①$$

ここで$P(A\landB)$はAとBが同時に優勝する確率を意味しているが、同着は考慮しない条件から、

$$P(A\landB)=0 … ②$$

である。従って①と②から

$$Pr=P(A)+P(B)$$

となる。

【補足】

本式は対象となる事象Aと事象Bが排他的[$P(A\landB)=0$]であれば成り立つので、単勝に限らずAとBを馬連、馬単、三連複、三連単の各買目とし、$P(A)$と$P(B)$がそれぞれの買目の的中率とすれば、本式は同様に成立する。


1-2.複勝2点買いの時のレース的中率

【設問】

A,Bの2頭の馬の複勝率がそれぞれ$F(A),F(B)$とする。このとき、この2頭の複勝馬券を同時に買った場合のレース的中率$Fr$を求めよ。但し同着は発生しないものとする。

【回答】

不定

【証明】

前設問と同様に考えれば、

$$Fr=F(A)+F(B)-F(A\landB)$$

となる。ここで、AとBの2頭が同時に1~3着に入る可能性はあるので、その確率は

$$F(A\landB)\neq0$$

である。このとき、

\begin{eqnarray}F(A)\geqqF(A\landB)\\F(B)\geqqF(A\landB)\end{eqnarray}

の制約条件はあるが、これらの条件を満たす$F(A),F(B),F(A\landB)$の組み合わせは無限に存在する。

以上から、複勝率が$F(A),F(B)$の複勝馬券2点を購入したときのレース的中率$Fr$は、$F(A\landB)$が確定出来ないことから、不定となる。

【補足】

$F(A\landB)$とはAとBの2頭のワイドの的中率を意味している。しかし、AとBそれぞれの複勝率が判っているだけでは、AとBのワイドの的中率を定めることが出来ない。これについて綺麗な証明を考えることは出来なかったが、恐らく簡単な証明は5頭立ての様な小頭数で全出走馬の単勝確率が既知であるときに、$F(A)$と$F(B)$が同じでも$F(A\landB)$が異なる例を示すことと思われる。

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