母年齢と産駒の成績③

牝系の年齢と産駒の競争成績の相関性について検証するシリーズの3回目です。(前回はこちら

前回は2代母の年齢も産駒の競争成績に一定の影響を与えることを示しました。今回はその過程で暫定的に無視をした2代母が高齢の場合のデータの変動に付いて改めて考察を行います。

1.母年齢と2代母年齢

先ずはこれまでに紹介した、「母年齢と2代母年齢が産駒の競争成績に及ぼす影響」について振り返ります。

左上図が母年齢と産駒の平均収得率の関係、右上図が2代母年齢と産駒の平均収得率の関係を示します。このとき、以下の状況を確認することが出来ます。

・サンプル数の十分にある年齢17歳近辺までの期間においては、加齢と共に産駒の競争成績の低下が確認できる。

・産駒の成績に対する影響度は、母の年齢の方が2代母の年齢よりも強い。

・年齢5~6歳の若年期については、母の場合は成績が低下するが2代母にはその傾向は見られない。

・年齢18歳以降の高齢期について、2代母の場合は産駒の成績が大きく変動するが、母の場合はそれが見られない。

そして、ここからは推測になりますが、母の場合はその年齢がダイレクトに産駒の成績に反映するのに対し、2代母の場合はその他の要素が表に出ている可能性を感じます。

ここで注意を払う必要のあるのが、投資用語で用いられる「生存バイアス」です。投資の世界における「生存バイアス」とは「運用歴の長い投資信託ほど成績が良い」現象を説明した用語で、「成績の悪い投資信託は結果的に早期に運用が停止されるのに対し、成績の良い投資信託は長期間運用が継続される。その結果、運用期間の長い投資信託の方が成績が優れる結果になる」ことを示します。即ち、原因と結果を取り間違えるミスを表したものです。

これを今回の結果に適用すると、「高齢の繁殖牝馬は優れた繁殖成績を残した繁殖牝馬である」と言う可能性です。「繁殖成績の優れない母馬は高齢になる前に用途変更される」ことが真であれば、これは「高齢の母馬は優れた繁殖牝馬であった」ことと同意です。

ここで、「母馬の年齢は直接的に産駒の成績に反映される」のに対し、「2代母はその繁殖能力が年齢以上に産駒に反映される」と仮定すれば、「2代母が高齢の場合に産駒の競争成績が優れる」状況を説明することが出来ます。

2.2代母年齢と活躍馬の産出率

つぎに、2代母の年齢と活躍馬の産出率の関係を調べてみます。

左上図は今回の調査サンプル全体に対する2代母の年齢の分布状況を表すヒストグラムです。これに対し、右上図は収得賞金が5000万円以上の活躍馬をサンプルとしたときの、2代母の年齢のヒストグラムになります。

右上図はサンプル数の減少により分布カーブが歪になりますが、それでも2代母が8歳時と21歳時の分布が微妙に大きい様にも思えます。そこで、右のヒストグラムを左のヒストグラムで除算して、2代母年齢に対する活躍馬の産出率を求めた結果を以下に示します。

上図より2代母が21歳時の活躍馬の産出率が突出して高いことが判りますが、これが根拠のある現象であるのか、単なる偶然の産物であるのか、結論を得ることは出来ません。只、少なくとも以下に付いては正しい命題として認識することが出来そうです。

2代母が高齢であっても、活躍馬の産出率に影響は及ぼさない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする