多点買いと破産確率の関係

以前、バルサラの破産確率表の話の最後で触れました、1レースで多点買いを行った場合の破産確率について、今回は考察することにします。

1.単勝多点買いの破産確率

今回は説明を分かり易くするために、具体的な例を用いて話を進めます。まず始めに100,000円の手持ち資金があるとします。今、馬Aの単勝率が10%で回収率が125%(オッズ12.5倍)の買い目があるとして、これを1000円ずつ購入し続ける場合を考えます。手持ち資金100,000円に対して1000円の馬券を購入するので、この時のリスクレートは1%になります。そして、的中率10%,回収率125%,リスクレート1%の場合のバルサラの破産確率を求めると、1.71%と計算されます。ここで、一般に投資の世界では「破産確率は0.5%以下に抑えるべき」とされていることから、この買い目を継続的に購入する戦略は、投資判断として不適格となります。

つぎに、先例と同じく単勝率10%で回収率が125%となる単勝を、4点買いする場合を考えます。具体的には何れも単勝率10%で回収率が125%の馬A~馬Dの単勝を各1000円ずつ、合計4000円購入します。このとき、馬A~馬Dの何れかが1着になる確率は10%×4=40%です。一方、単勝オッズが12.5倍であることから、払戻金は12.5×1000円=12,500円なので、このレース全体の合成オッズは12,500円÷4000円=3.125倍となります。ここで的中率は40%なので、レース全体の回収率は40%×3.125=125%となり、回収率は単独の買い目と変わりません。

以上から、このレースの買い目をマクロに見ると、的中率40%,回収率125%(オッズ3.1倍)の馬券を4000円購入するものと見なすことが出来ます。更に、手持ち資金100,000円の中から4000円の馬券を購入しているので、リスクレートは4%です。即ち、的中率40%,回収率125%,リスクレート4%と言うのがこのレース全体の買い目であり、このときのバルサラの破産確率は0.34%と求められ、基準の0.5%を下回ります。従って、この買い目は投資判断としては適格となります。

これは、「単勝馬券×1点を買い続ける場合には破産確率が1.71%で不適格であった買い目が、同等の買い目を4点合わせて多点買いすることで、破産確率が0.34%に低減され、投資として適格な買い目となる」ことを示しています。何故にこの様な結果になるのか、平易に説明することは難しいのですが、「不確実な投資対象を複数まとめることでバラツキ(ボラティリティ)を押さえ込む」と言う意味で、投資の世界で言うところの分散投資に相当する効果と考えられます。

2.オッズが異なる買い目の多点買い

前例では多点買いする馬A~馬Dの単勝の的中率,回収率を全て同一としたことで、説明がシンプルになっています。実際は各々の買い目の的中率,回収率が異なるのが普通であり、この場合にはより複雑な計算が必要になるのですが、ここではその一例として、買い目の金額を荷重調整した場合の結果を示します。

今、馬A~Dの単勝の的中率,回収率,オッズが以下の通り異なるものである場合を考えます。

 馬A:的中率= 5%、回収率=150%、オッズ= 30倍
 馬B:的中率=10%、回収率=120%、オッズ= 12倍
 馬C:的中率=12%、回収率=120%、オッズ= 10倍
 馬D:的中率=15%、回収率=120%、オッズ=  8倍

ここで、手持ち資金を100,000円とした時に、各買い目を単独で各1000円(リスクレート1%)購入し続けた場合、バルサラの破産確率はそれぞれ4.82%,3.19%,1.47%,0.44%と求められ、Dの単勝を除いて投資判断としては不適格となります。

これに対し、A~Dの何れの馬が勝っても配当金額が同じになる様に馬券を購入した場合考えます。具体的に、A=400円,B=1000円,C=1200円,D=1500円購入すれば、何れの馬が勝った場合でも、配当金額は12000円で同一になります。一方で、このときの総購入金額は4100円ですので、この時の合成オッズは12000円÷4100円≒2.9倍です。また、レース的中率は5%+10%+12%+15%=42%なので、レース全体の回収率は42%×2.9≒122.9%となります。

ここで、本レースの購入金額4100円は総資産の4.1%に相当するので、的中率42%,回収率122.9%,リスクレート4.1%の時のバルサラの破産確率を求めると0.35%と得られます。即ち、オッズが異なる買い目についても、金額を調整しながら多点買いした場合の方が、破産確率を低減出来ることが分かります。(注:Dの単勝を単独で購入したときの破産確率が0.44%に対して、多点買い時が0.35%と言うのは大差ないように見えますが、これは前者のリスクレートが1%であることに注意してください。もしリスクレート4.1%で馬Dの単勝馬券を購入する場合は、破産確率は26.6%もの大きな値になります。)


【補足】

本稿の説明は単勝を例としましたが、実際は3連系馬券の様な的中率が低い一方で、高い回収率の狙える買い目に対して実用的な考え方になります。例えば、的中率4%,回収率200%(オッズ50倍)の3連複の馬券をリスクレート1%で買い続けた場合のバルサラの破産確率は3.78%ですが、これを15点買いにした場合は、的中率60%,回収率200%(合成オッズ3.3倍)となり、これをリスクレート15%で購入しても、破産確率は0.41%に低下しますので、投資判断としては適格となります。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする