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ボードゲーム アーカイブ

2007年02月06日

ブローカー(Broker)

■ タイトル

米国のオリジナル版は "Broker", ドイツ版は "Borsenspiel"
 
■ デザイナー

F.Murray, S.Spencer

■ 発売元

Ravensburger社(ドイツ版)

■ プレイ人数

2~5人


■ ゲームの概要

経済ゲームの古典とも言える作品です。オリジナルは1960年に米国にて発売され、その後ドイツに渡り"Ravensburger"社より"Borsenspiel"の名で発売されました。その後、ドイツでは若干のルールとアートワークの変更を伴いつつ、数度のリメイクがされています。

経済ゲームの中でも株式取引だけに特化したゲームです。その分、ルールは比較的シンプルで、実際に株取引をする方ならばより理解し易い内容だと思います。プレイヤーは、乱高下する株式市場のなかで、高騰しそうな株を買い、下がりそうな株を売り抜けることで、巨万の富を築くことを目指します。


■ ルールの概要

株式市場を舞台にしたゲームですが、登場する株式は4つの有名企業だけです。プレイヤーはこの4つの企業の株価を上げ下げしながら、株を買い、時には売り抜け、回転売買により資産を増やして行きます。

手番のプレイヤーがすることは、株を売買することと手持ちのアクションカードを1枚使用して、会社の株価を上下させることだけです。アクションカードはゲーム開始時に各プレイヤーにほぼ均等な内容のカードが10枚づつ配られます。これを1枚ずつ消費し、手番を10回行ったらゲーム終了です。

アクションカードの内容は何れも株価の上下に関するものです。特定の会社の株を上げ下げするものから、マーケット全体に影響を及ぼすものもあります。また一定額上下するものもあれば、2倍・1/2倍と、極端な変化をするカードもあります。(株価が安いときは一定額上下するカードが有効ですが、株価が高くなると、2倍・1/2倍のカードが威力を発揮します。)

手番のプレイヤーは株の売買を自由に行うことが出来ますが、「一回の手番の中で、特定の株を買って、アクションカードで株価を釣り上げて、更にその株を売却する」と言った、一気に利益を確定する様な売買は禁止されています。単に、株価を上げたあとで保有株を売ったり、株価を下げてから株を買うことは可能です。

このゲームのミソは正にココにあります。即ち、特定の株の株価を上げたり下げたりするには、他のプレイヤーの思惑に乗じる必要があります。自分一人で利益を確定することは出来ません。「他人が騰げようとする株を買い、下げようとする株を売る。」これは実際の投資にも共通する所です。そして最後にはライバルを出し抜くのです。

またこの市場では株価は250を超えることはありません。250を超えるような値動きがあった時は、差額を現金で決済し、その後、株式を2分割します。(この辺りのメカニズムは、実際の投資家なら良く分かってもらえると思います。)

逆に、株価が10以下になることもありません。株価が10以下になる様な値動きをしたときも差額を現金で決済しなければなりません。このとき、現金決済が出来なければ破産します。要するに追証が払えずに破産するみたいなもんです。^^;
尚、このときに限り、他の保有銘柄を売って現金化し、決済に充てることは許されていません。従って、キャッシュポジションを落とし過ぎることは、ライバルに漬け込まれる隙を与えることになります。

その他、オプショナルルールとして、株式の寡占のルールがあります。特定の企業の株式を過半数所有したプレイヤーは、好きなタイミングで増資を行う権利が与えられます。増資を決定した場合、各プレイヤーは保有株の比率と等しく、増資される株式を購入する権利が与えられるのですが、ここで増資するプレイヤーの特権が効いてきます。即ち、他のプレイヤーの手持ちの現金が少ないときを狙って増資を発表すれば、他のプレイヤーは買い増しで応じることが出来ません。

アクションカードによって株価がドラスティックに変化するため、極端な印象を受けることもありますが、徐々に扱う金額が大きくなって行く様は、株式トレードがバブル化して行く様を、上手く醸し出していると思います。


■ アートワークについて

株価ボードは価格を示すピンを上下させるだけですので、レトロと要ればレトロですが、しょぼいと言えばしょぼいです。只、この辺りのコンポーネントは版によっても結構違います。株券は大ぶりの格好よいものが附属しています。

このゲームの雰囲気を最高に良くしているのは、ゲーム中に登場する4つの企業が、全て実在する企業であることです。企業の種類は版によっても異なるのですが、何れも有名企業であることには代わり無いようです。ちなみに、写真で紹介しているバージョンでは、IBM・シーメンス・ドイツバンク・BPカストロールの4社が登場しています。


■ 入手について

残念ながら絶版です。但し、ドイツでの発行数は多いゲームなので、版に拘らなければ比較的入手し易いゲームでもあります。(米国のオリジナル版はまず入手不能です。あったら、私も凄く欲しい。)

ドイツ版は、EBayでの取引経験があれば、恐らく入手可能です。但し、ドイツのEBayで探す必要があります。ドイツ語でのやり取りに不安を覚える方も居るやもしれませんが、心配はありません。大抵のドイツ人出品者は英語でコミュニケーション可能です。(英語もダメだと流石に無理なので、この手は諦めて下さい。)

日本で探す場合はヤフオクをウォッチし続けるしかありません。但し、ドイツゲームの中でもメジャーでは無いゲームなので、出品される機会は少ないかもしれません。(日本で落札する場合、状態にも寄りますが、2500円~4000円が適正価格でしょう。未開封新品はかなり珍しいので、価値はぐっと上がります。)

2007年11月08日

アクワイア(Acquir)

■ タイトル

アクワイア(Acquire)%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%82%A2_%E3%83%9C%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9.jpg
 
■ デザイナー

S.Sackson

■ 発売元

Habsro社(オリジナルは3M社)

■ プレイ人数

2~6人


■ ゲームの概要

不世出のゲームデザイナー、シド・サクソンがデザインした、ホテル経営をテーマにしたボードゲームです。経済or投資をテーマにしたゲームとしてだけでなく、全てのボードゲームの中でも極めて完成度の高いゲームと言っていいでしょう。

オリジナルのデザインは1962年にも遡り、ボードゲームの古典とも言えるものですが、そのゲームとしての面白さは、40年以上の月日を経た今日でも色褪せるものではありません。正に、「このゲームをプレイせずにボードゲームを語るなかれ」と言って良いゲームです。

古いゲームである故、何度が発売元が倒産する事態が発生し絶版の危機に瀕しましたが、その都度版権が引き継がれ、現在は米国Hasbro社より発売がされています。

ゲームの目的はホテルチェーンを拡大すると同時にその株式を集め資産価値を高めることにあります。このゲームの過程では必ずホテルチェーン同士の合併が発生することになります。このM&Aを如何に実行するか、またその際に持株の処分をどのように行うかがゲームの勝敗を左右することになります。


■ ルールの概要

ゲームボードは12×9のマス目に分割されており、それぞれにA-1,B-2と言った番号が振られています。また、それぞれのマス目に対応した番号のタイル1個ずつあり、各々のタイルが1件のホテルに相当します。

手番のプレイヤーは手持ちのタイルの中から1個を選んで、ボード上の対応するマス目に配置していきます。ここで、2つのタイルがボード上の並んだマス目に配置されたとき、それらのホテルはホテルチェーンと成り株式が発行(上場)されます。当該のタイルを置いたプレイヤー(要するに創業者)は株式を1枚もらいます。

また同時に、手番のプレイヤーは上場しているホテルチェーンの株式を購入することが出来ます。(但し市場に株があればですが。全て買い占められてしまっていたら、欲しくても買えません。)

ホテルチェーンを構成するホテルの数が増えるに応じてホテルの株価は上昇して行きます。従って、成長しそうなホテルの株を買うことが大切なワケですが、ここで重要なルールがあります。それは、配当金は筆頭株主と次点の株主の2名にしか与えられないと言うものです。従って、株式を買い進める以上は、筆頭株主(悪くても次点の株主)になる必要があります。

ところで、このゲームの最大のポイントはホテルチェーン同士のM&Aにあります。2つのホテルチェーンを合併させるには、2つのホテルチェーンを互いに接続する様なタイルを配置する必要があります。合併が発生するとその次点で規模の大きい方のホテルチェーンが存続企業と成り、規模の小さい方のホテルは吸収されて消滅します。

さて、ホテルチェーンを合併すれば、存続する側のホテルチェーンの規模は大きくなり、その分だけ株価も上昇します。では、吸収合併される側のホテルにメリットは無いかと言うとそうではありません。むしろ、吸収させる方が重要になるケースが多々有ります。

このゲームのポイントの1つは、市場に株が残っていて、かつ資金がある限り、株式の購入はいつでも可能である一方で、売却は一切出来ないと言う点にあります。即ち、ゲーム開始時に与えられたキャッシュは株式を購入するにつれて枯渇してしまいます。そこで、キャッシュフローを回復するために、ホテルチェーンを有る程度育てておいてから、より大きなホテルチェーンに売り飛ばしてしまう(吸収合併させてしまう)必要が出てきます。ここで、消滅側のホテルの株は時価で売却できるほか、存続するホテルの株と1:2の割合で株式交換することも可能です。また、消滅するホテルの筆頭株主と第2位の株主には特別配当金も支払われます。

要するに、会社を起業して軌道に乗ったら、それを惜し気もなく大手企業に売却してしまい、創業者が莫大な利益を得ると言う、典型的なM&Aの姿がここに出現するワケです。


■ アートワークについて

%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%82%A2.jpg3M社より発売されたオリジナル版は、紙製ボードの上に木製のタイルを置いて行くと言う、非常に渋い造りをしていました。その後、幾つかのバージョンを経て、現在のHasbro版では、今時のゲームらしくプラスチック製のボードの上に立体のホテルのミニュチュアを並べると言う、人目を引く派手なギミックの物へと変更されています。どちらを好むかは人それぞれなのですが、シンプルなタイルを使用する古いタイプが、やはりアクワイアらしいと言えると思います。


■ 入手について

Hasbro版は現在でも入手可能です。米国では普通に販売されていますし、通販で買うことも出来るでしょう。また、日本のボードゲームショップ・輸入ゲームショップでも扱っていると思います。

一方、3M版・Avalon Hill版と言ったビンテージ物が欲しい場合には、やはりオークションの力を借りる必要があります。バージョンによって入手難易度が違うのですが、物に拘らないならば、米国のEBayに常時出品されているものを見つけることが出来るでしょう。但し、木製タイルバージョンや、最も古いオリジナルバージョン(ボードに世界地図が描かれています)が欲しいと言った話になると、Ebayで根気良く探す必要が出てきます。

2008年01月25日

利益・廃液(Mull+Money/Industrial Waste)

mull%26money.gif■ タイトル

 利益・廃液
 原題:Mull+Money
 英題:Industrial Waste
 
■ デザイナー

 Jurgen Strohm

■ 発売元

 Hans Im Gluck(ドイツ)
 RIO Grande(米国)


■ プレイ人数

 2~4人


■ ゲームの概要

なんとも、ゲームのタイトルとしては奇異な印象を受けますが、「利益・廃液」は工場経営をテーマとする一種の経済ゲームです。オリジナルデザインはドイツのHans Im Gluck社で、原題は"Mull+Money"と韻を踏んだものに成っていることから、邦題も「利益・廃液」と呼ばれるのが一般的です。ちなみに、英題は"Industrial Waste"(産業廃棄物)なので、タイトルのつけ方としてはこちらの方がシンプルで良かったかもしれません。

プレイヤーは工場経営者として、原材料、加工、人件費、技術開発などをマネージメントし、利益を生み出すと同時に社会的地位を築くことが求められます。ここで、このゲームが今風と言うか特徴的なのが、環境問題をテーマとしている点にあります。工場の生産活動と同時に必ず発生してしまう廃棄物処理を、如何に処理して行くかがこのゲームのメインテーマに成ります。要するにCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)が問われるゲームってワケ。

プレイヤーは工場の経営者として利益を追求する一方で、発生する産業廃棄物の処理に頭を悩ませることになります。廃棄物の処理に十分なコストを掛ければそれだけクリーンな工場が実現できますが、その分だけ得られる利益は少なくなります。逆に、産業廃棄物を放置したりすれば、利益率は向上するかもしれませんが、社会的制裁を受ける可能性があります。

尚、作者のJurgen Strohmは産業廃棄物に関する専門家とのことです。ゲームデザイナーとしての作品は一般にこの1作しか知られていません。


mull%26money3.gif■ ルールの概要

ゲームの構成は比較的シンプルです。プレイヤーは手持ちの行動カードを使いながら、必要なアクションを行い会社を発展させ、利益を確保して行きます。


■ ゲームのポイント

ポイントは行動カードの内容です。カードには原材料の売買、製造契約、生産性向上、リストラ、廃棄物発生の抑制、廃棄物処理、不法投棄、賄賂 ...etc リアルかつ多彩な内容が示されています。

生産性を向上させリストラを推進しコストダウンを図るも良し、リサイクルを推進しクリーンな工場を目指すも良し、廃棄物を不法投棄しておいてヤバクなったら賄賂で切り抜けるのもまた1つの経営方針です。

原料の売買は相場に従って行われますので、極端の話、原材料をタイミングよく売買するだけでも、利益を得ることが可能です。これに集約して、単に原料を売買するだけで生産活動を行わなければ、廃棄物も発生しません。これも1つの作戦ですが、もはや工場ではなく商社です。(勿論、取り得る作戦の幅が広いと言うことはゲームとして優れていると言うことになります。)


mull%26money2.gif■ アートワークについて

本ゲームは非常に戦略的かつシンプルな好ゲームだと個人的に評価しているのですが、ドイツ本国での人気はそれほど高くありません。原因は、重たいテーマ性もあるのですが、アートワークがリアリスティックだったことも原因な気がします。もう少し柔らかい絵にしておけば、取っ付き易かったかもしれません。

但し、ユーロ風にデザインされた紙幣は良く出来ていると思います。


■ 入手について

本国ドイツでは絶版だと思いますが、米国版はまだ入手可能です。通販で買うことも可能です。値段はUS$30弱でしょう。
それほど有名では無いゲームと言うこともあり、国内のボードゲームショップでの在庫は無いと思いますが、オーダーすれば輸入してくれるかもしれません。

何れにしても、環境問題が取り立たされる今こそ、見直されるべきゲームだと思います。正に、早すぎた名作です。

2008年05月16日

一番売れてる株の雑誌ZAiが作った「株」ゲーム

zai_game_01.gif読んで字の如く、マネー雑誌ZAIが作成した株取引をテーマにしたボードゲームです。正直、これ程までにダサいネーミングのゲームを見るのは初めてです。^^;
以前より、このゲームのレビューだけは当ブログで書かなければならないと言う、勝手な使命感だけはあったのですが、ようやくそれを記すことにします。

さて、いきなりこのゲームの評価ですが、一言で言って「惜しい!」

日本国内で商業ベースとして販売されるボードゲームで、まともなものは全て外国製。日本製のゲームは評価にも値しないと言うのが、偽らざるところ。
そういう意味で、このゲームは間違いなく日本製でありながら、そのゲームメカニクスの中にもオリジナリティが確かに感じられます。これだけでも、正直評価できる内容です。

では何が「惜しい」のか? それは、ゲームのデベロップメントが甘いのです。基本アイデアに独創性があり、ゲームとしての素性も悪くない。しかし詰めが甘く、ゲームバランスを損なう部分が存在しています。発売時期を急ぐ余り、テストプレイ時間が十分に取れなかったのかもしれません。以下、その詳細を述べてみます。


■ゲームの概要

ゲームボードの外周にはモノポリーの様にマスが設けられており、更にこのマスにコースカードと呼ばれるカードを配置すると、ゲームボードが完成します。このギミックにより、ゲーム毎に異なるボードで遊ぶことが可能になります。

この様な仕掛け自体はオリジナルとは言えませんが、工夫が感じられるのがコースカードが赤と青に色分けされている点。この赤がブル相場を表し、青がベア相場を表し、外周の1周が1年間を表すのですが、この赤と青の分布を俯瞰して見ることで、1年間の何処でベアが来てブルが来るのか、相場の流れを予測することが可能になる様になっています。

手番のプレイヤーはサイコロ(通称ZAIコロ^^;)を振り、出た目の数だけ時間駒と呼ばれる駒を上記コース上で移動させます。即ち、一般的なゲームのように、プレイヤーは自分用の駒を持っておらず、単に時間の流れを表す駒を移動させることが出来るだけです。そして、この時間駒がコースを1周すると1年経過。2年経過するとゲーム終了となります。

各プレイヤーは自らの手番であるか否かに関らず、サイコロが振られる毎に株の売買を行うことが出来ます。即ち、株式の売買の機会は常に全プレイヤーに平等に与えられます。これは、実際の株取引に近づける処置だと思われます。尚、株を買うのも売るのも、一部の例外を除いて、基本的にプレイヤーの自由です。但し、株の売買には手数料が発生します。この手数料のルールはゲームに無駄にリアリティを持たせるだけのものでは無く、ルール上有意な仕掛けになっています。

そして、このゲームには全部で9つの上場企業が登場します。更に、この9つの企業は、安定企業・普通企業・通常企業の3種に分類されます。要するに安定企業は株価の安定した、損もし難い代わりに儲けも出し難い会社。逆に変動企業は値動きの激しい新興企業。普通企業はその中間を表します。尚、変動企業だけは配当金が支払われません。
(企業の中にカブト自動車が在るのは、「気まぐれコンセプト」のファンには嬉しい所。出来れば白くま広告社も欲しかった。)

サイコロが振られる毎に時間駒が移動し(注:0の目が出た時は動かない)、移動先のマスに従ったイベントが実行されます。例えば、時間駒が赤(ブル相場)のマスに止まると、ブルのイベントが発生し、基本的に株価が上昇します。青はその逆。

さて、このゲームを最も評価できる点は株価変動の仕組みにあります。このゲームでは1つの企業の株価を、実際の株価と理論株価の2つで表現するのです。そして、実際の株価は理論株価に近づく方向に推移する特徴を持っています。要するにこれはバリュー投資の概念であり、理論株価と実際の株価が乖離するほど、上昇余地(又は下落余地)のある株式を表すことになります。

この2つの株価の併せ持つシステムは、私の知る限り海外の作品でも見たことがありません。ボードゲームとしては非常に独創的なアイデアであり、かつ有用なメカニクスとして評価に値すると思います。


このシステムを利用して、プレイヤーは株価の上昇と下落を予測し、株式のトレーディングを行いキャピタルゲインを稼いで行きます。また、1年の内には中間決算と本決算の2回があり、ここでは配当金が支払われ、インカムゲインを獲得することが出来ます。

そして最終的には、2年目の本決算が終了した時点で資産総額が最も高いプレイヤーが勝者となります。


zai_game_02.jpg■ゲームの戦略について

基本的には理論株価と実際の株価が乖離した、株価上昇余地の高い銘柄を仕込み、キャピタルゲインを狙うべきです。また中間決算と本決算では確実にインカムゲインを獲得することも重要です。
実際と同様に、分散投資を図ることは極端な損失を抑える効果がありますが、その分、大きく利益を出すことも出来ません。従って、負けそうになったら、少数銘柄に集中投資する手は有用です。


■問題点について

ここまでは、比較的好意的な記述を続けてきましたが、本ゲームにはボードゲームとして評価するときに、幾つかの問題点があり、そのなかの幾つかは、決して小さい問題ではありません。以下、問題点を列挙して見ます。

(1) 配当金が支払われても、株価の配当落ちがありません。即ち、ほぼノーリスクで
  インカムゲインを得ることが出来ます。決算期が近づいてきたら、ポートフォリオ
  を好配当銘柄に偏らせることが有効になってしまいます。
  
(2) 株価の変動がドラスティックすぎます。株価を変動させる場合、基本的にサイコロを
  振って、出ために応じて株価を上下させます。しかし、この変動幅が如何見ても大き
  過ぎます。結果的に、理論株価と実際の株価の乖離が極端に大きくなることが頻繁に
  ありました。この辺りが、テストプレイが甘いのではと感じる所です。
  
(3) プレイヤーの意思を相場の上下に反映させる術が無い。これはある意味で、デザイン
  上の思想なのかもしれません。確かに、個人投資家が自らの売買で株価を操作する
  ことなど不可能な訳で、ゲームにリアリティを持たせようとすると、マーケットの
  動きに対してプレイヤーを受動的に置くしかありません。しかし、プレイヤー同士が
  競うボードゲームとしては、戦略性が欠如したものになってしまいます。極端な話、
  他のプレイヤーの売買を真似て取引することも可能であり、一旦リードしたプレイ
  ヤーの逃げ切りが容易なゲームシステムと言えます。トップのプレイヤーに2位の
  プレイヤーと同じポートフォリオを組まれたら、まず逆転は出来ません。保有株を
  他のプレイヤーからは隠せるようにすべきだったかもしれません。
  (注:厳密には取引手順の関係で完璧にまねる事は出来ないのですが、概ねは可能
  です。)

(4) イベントの中にゲームの状況を一変させる、極端なものが存在します。その1つが
  「サドンデス」と言うイベント。これが発生すると、実際の株価が理論株価より一定
  以上安く放置されている企業が倒産してしまいます。^^;
  これを回避するためには、極端に割安な銘柄への投資を控える必要がある訳で、これ
  はこれでルールとして成り立ちます。しかし、問題は(2)で述べた株価変動が極端
  過ぎる点。直前で株価が大きく下げた所に、このイベントが発生すると、大半の
  企業が倒産してしまいます。正に大恐慌ですが、そんな状態が頻繁に発生する様では
  ゲームとして成立しません。私のプレイでは1ゲームにこれが2回も発生しまし
  た。どう見てもテストプレイの不足としか思えません。


■まとめ

このゲームの最大の問題点は、中途半端に「株取引を学ぶ」と言う、学習要素を取り入れようとした点にあるように思います。「遊びながら学べる」と謳うゲームに面白いものは無いという定説に従って、本ゲームでも面白さを割り引かせる結果になったと思います。

最後に、このゲームは買うべきなのか否か? まず、初心者が「株取引をゲームで学びたい」等と思って購入を検討するのであれば止めておいたほうが良いでしょう。そのお金で、ミニ株を実際に買った方が余程ためになります。

一方、ボードゲーマーな方(特にコレクターな方)は、このゲームは買っておくべきかもしれません。恐らく、本ゲームは初版を売り切ったところで、二度と再販されることはありません。その点で、入手不能になる前にコレクションとして仕込んでおく価値はあると思います。
プレイ上、オリジナルルールのままでは厳しいところのあるゲームですが、バリアントルールを上手く追加出来れば、案外化けるゲームかもしれません。

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