6/27、グリーンFの2026年度の募集馬が発表されました。募集頭数は全20頭で、昨年の22頭より2頭の減少になりました。内訳は、社台F生産馬(11頭→8頭)、ノーザンF生産馬(3頭→4頭)、那須野系牧場(8頭→7頭)で、社台Fが減った一方でノーザンFが増えた所は驚きです。自分の記憶の限りではノーザンF生産馬は3頭/年がMAXでしたので、4頭に増えたのは大きなサプライズでした。
一方で、那須野系の募集馬7頭は正直少ない印象を受けます。もしかすると、特別提供馬がこのリスト外から追加される可能性がワンチャンあるかもしれません。なお、7頭中の6頭はグリーンFの縁故馬ですので、昨年来のアワブラ化は継続していることになります。
ところで、昨年の募集馬はキタサンブラック×2頭を始めとして例年になくリーディング上位の種牡馬産駒が募集され、募集価格も高額になった印象でした。これに対し今年は人気上位の種牡馬はモーリスが存在するくらいで、あとは新種牡馬やマニアックな種牡馬が揃えられています。これは昨年の募集が特異的であって、今年は原点回帰したのかもしれません。
以下、個々の募集馬について第一印象を順次記載して行きます。先ずは前半の9頭から。
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■ターリーの25(父Ace Impact)社台ファーム
ある意味で、本仔が今年の募集馬を象徴する1頭です。母ターリーはサンドリンガム賞(仏・G2)を始めとして海外4勝を上げた活躍馬で、繁殖牝馬として社台Fが購入。本仔はその3番仔で、上の2頭はそれぞれ英国と仏国で生産されて日本国内に輸入されています。初仔のエコログレンは未勝利のまま抹消。2番仔のタリマルジャンは現時点で未出走です。
本仔で注目すべきは父Ace Impactで、2023年に凱旋門賞を制しました。凱旋門賞馬の産駒を日本で所有こと自体がレアであり、これがグリーンFから募集されると言うのは驚きしかありません。正直、ワケ有りを勘ぐりたくなる募集馬ですが、「母馬を社台スタリオンに残す前提からセリに掛けずにグリーンFに下した」と言うストーリーは一応成り立ちます。ちなみにAceImpact産駒は現1歳馬として12頭が血統登録されており、本馬はその内の1頭。
■サムライドライブの25(父インディチャンプ)那須野牧場
母サムライドライブはグリーンFの地方馬枠で募集され、名古屋競馬にてデビューから10連勝を飾った超絶活躍馬。生涯成績は33戦16勝。重賞は9戦を制覇し2着も4回を数えます。本仔はその3番仔で、初仔のドリームトリップも名古屋競馬でこれまでに9戦6勝を記録しています。
ポイントは本仔が初めて中央募集になりそうな点。3番仔になって中央で募集される理由を考えると想像が膨らみます。まず考えられるのはシンプルに「本仔の出来が良いので中央で募集する」と言うストーリー。他にも「初めての牡馬であること」「父が芝馬を出すインディチャンプであること」「グリーンFとオッズパークのコラボが無くなったこと」などが要因として推察されますが、何れもネガティブな要素ではありません。
父インディチャンプは昨年産駒がデビューした新しい種牡馬。現役時代はマイルG1を2勝する活躍をしました。種牡馬としては初年度産駒からチューリップ賞(G2)を制したタイセイボーグを出したことで注目が集まっています。現3歳馬の勝ち上がり率は36%に過ぎませんが、未勝利戦終了までにはもう少し上がってくる筈です。注目したいは勝ち鞍がダートよりも芝が優位な点。但し、ダートが全く走らないワケではありませんので、今後のバランスは変わる可能性があります。距離は父と同様にマイル前後が適性範囲です。
種付け料は120万円であることから募集価格は安価に抑えられる筈ですので、馬体の出来によっては妙味が大きくなりそうです。
■リーチングの25(父インディチャンプ)ノーザンファーム
母母Maryinskyはアイルランド産の繁殖牝馬。現役時代は海外G1を2着した実績があります。さらに、本仔の伯母ピーピングフォーンは海外G1を3勝し、その産駒も多数の重賞を制した優良牝系。一方で母リーチングは未勝利。日本で繁殖生活に入り、兄姉から1勝馬が2頭出ています。本仔はその7番仔で、出生時の母年齢は16歳。牝系から期待されるレベルの活躍馬は出ていません。
父インディチャンプについてはサムライドライブの25の項を参照。一応注意しておきたい点はインディチャンプ産駒は活躍馬が牡馬に偏重する可能性です。世代を重ねないと結論は出ませんが、牝馬に出た本仔は割り引いて見た方が安全かもしれません。
恐らく、募集価格は安価に抑えられるはずですが、サムライドライブの25と比較してしまうとスペック的な妙味に欠ける感は否めません。
■サムシングジャストの25(父ウエストオーバー)ナスノファーム
母サムシングジャストは元グリーンF所属馬で4勝を上げたOP馬。府中牝馬(G2)では3着の成績を収めています。イーブンベター、サムシングスイートの半姉2頭も勝ち上がりを決めており、現在は1勝馬ですがここから成績を伸ばす余地は十分あります。牝系全体をみても安定した成績を残しており、本仔についても堅実な成績は期待出来そう。
父ウエストオーバーは欧州から輸入された新種牡馬で、優駿スタリオンに繋養中。現役時代はアイリッシュダービーを7馬身の大差で制しました。また、ドバイシーマクラシックではイクイノックスの後塵を拝したものの、2着に好走しています。戦績的にはクラッシックディスタンスを主戦場にしていることから、産駒の距離面の不安は少ないと思われますが、欧州中距離種牡馬に散見される産駒のスピード不足には注意が必要でしょう。本仔はその初年度産駒。種付け料は250万円でした。
ウエストオーバーの種牡馬能力は未知数ですし牝馬に出た点も残念ですが、2頭の半姉が手堅く走っていることから一定の活躍は期待したいところです。一方、懸念材料はスピード能力だと思うので、出資に当たってはその辺りを注意したいと思います。募集価格は姉よりも抑えられる筈なので、割安感の有無もポイントになりそう。
■アンデスクイーンの25(父クリソベリル)ノーザンファーム
母アンデスクイーンは元グリーンF所蔵馬で地方重賞を3勝した活躍馬。さらに、半姉のアンデスビエントとレーナデアルシーラも地方重賞を制しており、繁殖牝馬としても極めて優秀です。本仔はその5番仔。出生時の母年齢は11歳ですから、母系としての評価はまだまだ盤石です。
一方、父クリソベリルはデビューから6連勝を飾り、G1も4勝した活躍馬ですが、その種牡馬成績は市場の期待レベルを満たしているとは言い難い状況です。初年度産駒である現3歳馬の勝ち上がり率は現時点で33%に留まり、晩成傾向を示しています。特に重賞勝ち馬を一頭も輩出していない点は、繁殖牝馬の質を考えると不満が募るところです。
但し、アンデスクイーンークリソベリルの配合は全姉クイーンズドリームにて実績があり、3歳1月に勝ち上がりを果たしています。牝馬である点を考慮すれば、牡馬に出た本仔にはそれ以上の可能性を期待できる筈で、配合上の不安は軽減できると思います。
クリソベリルの繁殖成績が微妙な所と募集価格との兼ね合いで、本仔のコスパを如何に評価するのかが本仔の取捨に繋がりそうです。
■メグスタスの25(父グレナディアガーズ)ナスノファーム
母メグスタスはノーザンF生産馬でキャロットから募集されるも未勝利のまま引退。2023NFミックスセールで繁殖牝馬として上市されたところを那須野が落札しました。従って、グリーンFとは縁故関係の無い牝系であり、本仔はその初仔になります。
那須野牧場が未勝利馬のメグスタスを落札した根拠はその母ディアドラノビアの牝系に魅力を見出したものと考えられます。ディアドラノビアはフローラS(G2)を始めに重傷を3勝。その産駒にはディアドラマドレ、ディアデルレイ、ドレッドノータス、グランディアの重賞勝ち馬がおり、12頭の産駒の内で未勝利はメグスタスを含めて2頭しかいません。普通に考えてディアドラノビアは「ダブルコピー牝馬」であったと思われることから、ドレフォンを配合したメグスタスも「ダブルコピー牝馬」の可能性が高いと考えられます。
父グレナディアガーズは朝日杯FS(G1)を含めて重賞を2勝した活躍馬。得意距離は芝1200~1600でした。骨折を遠因に若くして引退となりましたが、引退レースの阪神C(G2)も2着に好走しています。引退後は社台SSで繁殖入りし、本仔がその第一世代になります。
個人的に自分がグレナディアガーズに惹かれるのはFrankelの父系である点。同じくFrankel産駒からは既にモズアスコットが種牡馬入りしていますが、その繁殖成績は年を経る毎にアップを続けています。Frankelの血が日本の競馬にマッチすることは疑いありません。
新種牡馬を父に持つ初仔であることから、実績的な裏付けのとれない本仔ですが、それだけに青田買いの魅力のある募集馬です、シベリウス牝系のいない今年の那須野系募集馬の中で、隠し玉と考えて良いでしょう。
■サザナミの25(父ゴールドシップ)社台ファーム
母サザナミは元グリーンF所属馬で、馬体重400kg前後の馬体でオープン馬に上り詰めました。本仔はその6番仔。しかし、母の小さな馬体が産駒にも遺伝してしまい、既出走の5頭は何れも中央で勝利を上げることが出来ていません。グリーンFからも過去にスズナミとリプレットの2頭が募集されていますが、何れも馬体が小さく最高着順は3着止まりでした。
父ゴールドシップは雄大な馬体で芝の長距離戦を中心にG1を6勝した人気馬です。種牡馬入りした後は必ずしも繁殖の質に恵まれませんでしたが、その中からメイショウタバルを筆頭に父譲りの長距離重賞を制する産駒を輩出しています。通算AEIは1.24で平均値を大きく超えている上に、AEI/CPIも1.16で産駒の質は繁殖の質を上回っています。種牡馬としては十分な成功を収めていると考えて良いでしょう。
問題はスプリンターの母とステイヤーの父と言う相反する脚質を配合している点。恐らくこれは尺の大きな仔を出すことにフォーカスした配合で、「開き直り」すら感じます。そう言う意味で本仔の評価は測尺の大きさで判断すれば良いと思います。もし460kg以上で競馬を出来るサイズの仔であれば妙味を感じますし、逆に400kg前後までの成長しか見込めなければ見送りが順当と考えれば良いと思います。
なお参考データですが、社台F生産のゴールドシップ産駒は既出走13頭中の6頭が勝ち上がっており、勝ち上がり率は46%。さらに牡馬に限れば勝ち上がり率67%、2勝馬率50%と極めて優秀です。
■エイシンバンバの25(父シャンハイボビー)ナスノファーム
母母Stella Blueは仏・ミエスク賞(G3・芝)を勝利した血統馬。母エイシンバンバは米国産の競争馬として輸入され。中央で5走、園田で2走しましたが未勝利のまま引退。引退後は那須野牧場で繁殖入りし、本仔はその7番仔で内5頭がグリーンFから募集されています。特にルヴァンヴェールとサミアドの2頭は特別募集馬として無償提供され、各々2勝を上げました。エイシンバンバは派手さはありませんが、既出走産駒の5頭中3頭が勝ち上がりを決めており、地味に安定した繁殖牝馬です。
ちなみに、母父Rock Hard Tenは産駒数こそ少ないのですが、既出走18頭中の8頭が勝ち上がり、率にして44%は中々に優秀な成績。特に牡馬に限れば3/5が勝ち上がっています。
父シャンハイボビーは米国産の輸入種牡馬で、現役時代はBCジュヴェナイルと米シャンペインSの米ダートG1を2勝した活躍馬です。日本での種牡馬成績は正直言って冴えませんが、エイシンバンバとシャンハイボビーの配合は全兄サミアドが2勝を上げており、一定の成績を残しています。
本仔は堅実な仔出しの母と実績のある父の配合の牡馬ですから、安価に募集されればコストパの良い募集馬になると思います。
■レーヴドカナロアの25(父シュヴァルグラン)ノーザンファーム
仏G1馬レーヴドスカーから連なる牝系。G1馬の伯母レーヴディソールを始めとして、近親に多数の重賞馬の存在する名牝系です。一方、母レーヴドカナロアは新馬勝ちを収めた後、ファンタジーS、フェアリーSの重賞路線を目指しましたが結果を出せず、1勝クラスのまま現役を引退し繁殖生活に入りました。本仔はその4番仔ですが、既走馬の2頭は何れも未勝利です。(注:2番仔マナイアラカニは故障さえ無ければ未勝利戦での勝ち上がりが見込めます。)
父シュヴァルグランはジャパンCを筆頭に芝の長距離重賞を3勝した活躍馬。引退後はブリーダーズSSで種牡馬生活に入りましたが、残念ながら目立った産駒は輩出できていません。勝ち上がり率も冴えず、2025年を最後に種牡生活を引退しています。やはりスピード不足のリスクを抱えるステイヤーの種牡馬は成功確率が低そうです。
以上、カタログスペックから本仔の評価ポイントは優秀な牝系しか見当たりません。出資にあたっては「馬体がメチャメチャ良く見える」などの見所が必須になりそうです。