6/28、グリーンFの2025年度の募集馬が発表されました。募集頭数は全22頭で、昨年の21頭より1頭の増加となりました。内訳は、社台・白老F生産馬(11頭→11頭)、ノーザンF生産馬(3頭→3頭)、那須野系牧場(7頭→8頭)で、那須野系生産馬が1頭増えた状況です。
そこで注目すべきは那須野系牧場の生産馬で、募集された8頭の全てが過去のGF所属馬の縁故馬。そう言う意味で、グリーンFは那須野生産馬のアワブラ化が進んでいる状況であり、今後のクラブとしての方向性を表している気がします。
対照的に社台系の募集馬でグリーンFのアワブラはルヴェルソーの1頭のみ。以前から、「クラブの縁故馬でも出来が良いと本家から募集されてしまう」と囁かれていたことから、「出資馬の血縁にも将来的に出資して行きたい」「母馬優先権を有効活用したい」と考える会員さんは、那須野系生産馬を選んだ方が良いのかもしれません。
なお、2025年グリーンFから募集して欲しい仔馬で採り上げた10頭からは、半数の5頭が募集される結果となりました。加えて、可能性が低いと考えてリストから落としたフリスコベイとアイリッシュムーンが募集されたことで、想像以上に強力なラインナップが出て来たと思います。
以下、個々の募集馬について第一印象を簡潔に記載して行きます。先ずは前半の11頭から。
※ 馬名の前の■をクリックするとnetkeibaの当該馬の頁が開きます。
■エンジェルサークルの24(父イスラボニータ)社台F
海外7勝を上げた曾祖母マウンテンエンジェルから連なる牝系。グリーンF所属馬との縁故関係はありません。祖母ツインエンジェル、母エンジェルサークルの何れも2勝を上げておりボトムラインが堅実な印象。そう言う意味で、牝馬に出た本仔も手堅く走る期待が持てます。本仔はそのエンジェルサークルの初仔で、兄姉の実績はありません。なお、母父はロードカナロアですが、勝ち上がり率は20%台に低迷しています。
父イスラボニータはフジキセキの後継種牡馬として期待をされましたが、産駒の重賞勝ちはG3まで。通算AEIも0.84で平均値に届かず、期待レベルには達していません。何故かグリーンFからは毎年の様に産駒が募集がされていますが、活躍馬は出ていません。イスラボニータとロードカナロアの配合も低調。
■スパニッシュラブアフェアーの24(父キズナ)社台F
母スパニッシュラブアフェアーは海外3勝・G2で2着の活躍馬です。さらに姉スパニッシュクイーンはアメリカオークス(G1)を優勝。妹Spendarellaもデルマオークス(G1)の優勝馬で、極めて牝馬の走っている牝系です。グリーンF所属馬との縁故関係はありません。本仔はスパニッシュラブアフェアーの初仔で兄姉の実績はなく、母父Karakontieも実績がありませんので評価材料に乏しい状況。
父キズナはディープインパクト産駒としては現在トップの種牡馬であり、特に2024年以降、好成績を残しています。今年は産駒がダートG1を2つ制しており、芝・ダート問わず活躍馬が出ている点も見逃せません。勝ち上がり率は50%を記録し、通算AEIも1.8で文句なしです。牝馬の成績も優秀で正に死角がありません。
■アイリッシュムーンの24(父キタサンブラック)那須野
祖母ナスノシベリウスから連なる牝系。ナスノシベリウスは米国から輸入された競走馬で現役時代は降級を含めて3勝。引退後は繁殖入りして、デビューした7頭の産駒から6頭が複数勝利を記録。特に5番仔のハーツコンチェルトはダービー3着の良績を残しており、極めて優秀な繁殖牝馬です。本仔の母アイリッシュムーンはその3番仔で芝とダートで3勝を記録。本仔はその初仔になります。母父はDubawi系のマクフィ。母父としての実績は少ないですが、既出走馬の5/11が勝ち上がり、牡馬に限れば3/5の勝ち上がりです。
父キタサンブラックは菊花賞を含めて重賞を10勝。G1は7勝した名馬です。繁殖入りした後もイクイノックスを輩出するなど、通算AEI=2.19、勝ち上がり率46%の好成績を記録。特に牡馬に限るとAEI=3.88、勝ち上がり率53.1%を記録し、現役種牡馬としては最高峰に位置します。なお、キタサンブラックとDubawi系は配合記録が少なく、配合の傾向性は掴めません。
■ナスノシベリウスの24(父キタサンブラック)ハシモト
牝系の評価はアイリッシュムーンの項を参照。
アイリッシュムーンの24と本仔は父キタサンブラックが同一で3/4同血の関係。最大の差異は本仔が牝馬であると言う点です。ここでキタサンブラック産駒は牡馬>牝馬の傾向性ですが、牝馬だけでも通算AEI=1.07、勝ち上がり率40.1%なので普通に優秀な成績を記録しています。
アイリッシュムーンの24と比較して本仔の方が評価できる材料はナスノシベリウスの優れた繁殖成績。一つ上のコンサートツアーを除いて勝ち上がっている産駒の成績は極めて高く評価が出来ます。特にハーツコンチェルトの下と言う肩書は大きいと言えます。また、母父Unbridled’s Songが勝ち上がり率46%の好成績を記録している点も見逃せません。
キタサンブラックとUnbridled’s Songの配合に関しては1/1が勝ち上がり。Unbridled系まで広げると3勝馬ランスオブサターンを含めた4/5が勝ち上がり。サンプル数は少ないのですが、相性は良いと考えて良さそうです。
※ 本仔の当歳時の駐立写真がハシモト牧場のサイトにて確認することが出来ます。
■エイシンバンバの24(父サトノアラジン)那須野
祖母Stella Blueは仏・ミエスク賞(G3・芝)を勝利。母エイシンバンバは米国産の競争馬として輸入され。中央で5走、園田で2走して未勝利のまま引退しています。引退後は那須野牧場で繁殖入りし、本仔はその6番仔になります。そして、6頭中の4頭がグリーンFから募集され、特にルヴァンヴェールとサミアドの2頭は特別募集馬として無償提供され、各々2勝を上げました。エイシンバンバは派手さはありませんが、既出走産駒の5頭中3頭が勝ち上がりを決めており、地味に安定した繁殖牝馬だと思います。
ちなみに、母父Rock Hard Tenは産駒数こそ少ないのですが、既出走18頭中の8頭が勝ち上がり、率にして44%は中々に優秀な成績。特に牡馬に限れば3/5が勝ち上がっています。
父サトノアラジンは芝1400~2000で8勝し、安田記念(G1・芝1600)も制した活躍馬。しかし、種牡馬としての成績は芳しいとは言えず、勝ち上がり率29%、通算AEI=0.59に留まっています。牡馬に限定しても勝ち上がり率は33%と寂しいですし、重賞を制した産駒も出ていません。牝馬は短距離傾向が強く、牡馬はマイル~中距離に距離適性を示しています。
■ナスノフォルテの24(父サトノクラウン)那須野
牝系の評価はアイリッシュムーンの項を参照。
母ナスノフォルテは祖母ナスノシベリウスの2番仔で、現役時代はダートで2勝を上げています。引退後は繁殖入りして、本仔はその2番仔。初仔のラージアンサンブルはグリーンFから募集されていますが、現時点でデビューは果たしていません。一方、母父ジャスタウェイの繁殖成績は勝ち上がり率が18%と極めて低く、牝馬に限れば僅か13%しかありません。
父サトノクラウンは宝塚記念と香港ヴァーズでG1を2勝した活躍馬ですが、種牡馬としての成績は芳しくありません。勝ち上がり率は19%で20%を切っており、通算AEIも0.63に留まっています。さらに、牝馬に限ると勝ち上がり率が19.4%、通算AEIは0.37しかありません。距離適性は牡馬は長距離適性で牝馬はマイル近辺にあります。
配合的にスピード不足が懸念され薬指は動き難いのですが、噂では本仔が今年の特別募集馬である可能性が指摘されています。もし、ナスノシベリウス牝系から特別募集馬が出るのであれば、迷わず取りに行きたい1頭になります。
■ルヴェルソーの24(父サトノクラウン)社台F
スカーレットインクから連なる名牝系で、所謂スカーレット一族です。本仔の曾祖母リボンアートは中央6勝を上げたOP馬で、祖母リボントリコロールと母ルヴェルソーは元グリーンFの所属馬。各々、中央2勝を上げています。本仔はその初仔ですが、2番仔の種付け後に逝去しており、本仔がルヴェルソーの唯一の産駒となります。本仔の母父はルーラシップで、勝ち上がり率39%は無難な成績と言えます。
父サトノクラウンに関してはナスノフォルテの項を参考。ここで、ナスノフォルテの24との違いは本仔が牡馬である点。牡馬に限ったサトノクラウン産駒の成績は勝ち上がり率こそ19%ですが、通算AEIは1.17と平均値を超えています。これにはタスティエーラの存在が大きいのですが、少なくとも牝馬よりは一発の魅力がありそうです。
■ロキエの24(父サトノダイヤモンド)ノーザンF
プチノワールから連なる牝系。本仔の祖母が阪神JFを制したローブティサージュですが、母ロキエは未出走のまま繁殖入りをしています。本仔はその初仔で兄姉の実績はありません。母父はロードカナロアは、勝ち上がり率20%台に低迷。
父サトノダイヤモンドは3歳で有馬記念を制するなど、G12勝を含む重賞を6勝した活躍馬。引退後は社台スタリオンにて種牡馬生活に入りましたが、初年度産駒の成績が低迷。現在はブリーダーズスタリオンに移籍しています。種付け料は本仔が種付けられた2023年が250万円ですが、現在は100万円に減価。繁殖成績は通算AEI=0.69、勝ち上がり率は34%。さらに牝馬に限れば通算AEI=0.56、勝ち上がり率が28.9%に低下します。
繁殖成績が低迷した原因は脚質が中距離~長距離に偏重することが原因で、言い換えればスピード不足に陥りやすいと考えられます。傾向性が明らかになった現在では、中長距離を狙った配合で活路を見出すことも出来そうですが、本仔の牝系は短距離~マイルなので中途半端になるリスクを感じます。
正直な話、ここまでのデータを見ると買える要素は皆無に見えますが、希望の光はキングカメハメハとの配合です。母系にキングカメハメハの血を有する既出走のサトノダイヤモンド産駒は27頭存在し、内14頭が勝ち上がっています。勝ち上がり率は52%に達し、3勝クラス以上が5頭も存在します。さらにこの傾向は牝馬にも当て嵌まり、14頭中の8頭が勝ち上がって、3頭が3勝クラス以上の良績を収めています。
また、ノーザンF生産のサトノダイヤモンド産駒としては、既出走馬53頭中の24頭が勝ち上がり、勝ち上がり率は45%。牝馬に限定すると、28頭中の15頭が勝ち上がり、勝ち上がり率は53%にアップします。
これらのデータはサンプル数が少ないので信頼度に欠けますが、留意しておきたい情報です。本仔はノーザンF育成でもあり、安価に募集されるのであれば面白い1頭かもしれません。
■ソムニアの24(父サリオス)ノーザンF
本仔の曾祖母ドリームビジョンから連なる一大牝系。近親にG1×4勝のユートピア、G3×2勝のアロハドリームなど、活躍馬が多数見つかります。本仔の母ソムニアは中央1勝ですが函館2歳S(G3・芝1200)で3着の成績を残しており、本仔はその6番仔。半兄にはマイル以下で重賞を2勝したタイセイビジョンがいる良血です。母父スペシャルウィークは勝ち上がり率37%でマズマズ。
父サリオスは本仔の世代が産駒デビューとなる新種牡馬。現役時代は朝日杯(G1)を始めに、重賞を4勝した活躍馬です。マイル戦を主戦場としましたが、皐月賞とダービーでも2着の成績を残しており、広い距離適性を有していました。何れにしても産駒のスピード能力に不安は無いと思われます。種付け料は150万円でスタートし、現在は200万円に上昇しています。
気になるのは配合的にサンデーサイレンスの3×3を構成すること。ハーツクライ系とサンデーサイレンス系との配合成績も不振です。そこで、3世代内にサンデーサイレンスの父母間クロスを有する既出走馬の勝ち上がり率を調べてみると、129/475=27%(牝馬:49/238=20%)で、やはり低調。しかし、これをノーザンF生産馬に限定すると14/24=58%(牝馬:7/12=58%)で、むしろ好成績。サンプル数が少ないので信頼度は低いのですが、過度の懸念は不要かもしれません。
■シングシングシングの24(父ダイワメジャー)那須野
祖母シンギングセンセーションは米国産の輸入繁殖牝馬。本仔から見て4代母のCourtHostessがブラウン&ウイリアムソンH(米国G3)を勝っていますが、祖母と母は特段の成績を残していません。シンギングセンセーションの産駒は多数がグリーンFから募集されており、初仔のアースゼウスが中央4勝を上げ、本仔の母シングシングシングも中央2勝をしています。本仔はその3番仔。初仔のブルームノーズはこれまでに3走して未勝利。2番仔のアイムシンギングはグリーンF所属馬ですが、ゲート試験合格後に種子骨に骨折を起こしてしまい、現時点で未出走です。
一方、母父ヨハネスブルグは全体の勝ち上がり率が29%ですが、牡馬に限れば35%あるので懸念レベルではありません。
父ダイワメジャーはGⅠレース5勝を含めて重賞を8勝した活躍馬。種牡馬としてもレシステンシア、アドマイヤマーズと言ったマイル戦をメインにGⅠを複数回制する産駒を出しました。現時点で年齢は24歳となり、本仔がラストクロップとなります。また、グリーンFとダイワメジャーの相性は良好で、ボールライトニングとファンタジステラの2頭のオープン馬を出しています。
ちなみに、ダイワメジャー×ヨハネスブルグの配合は頭数こそ3頭ですが、2頭が勝ち上がり、内1頭は今年OP入りを果たしたルクスメテオールです。産駒実績のないシングシングシングに敢えてダイワメジャーを配合したことは、繁殖能力が高く評価されていることの証左とも言えますし、加えてルクスメテオールの活躍を見ての選択かもしれません。
■シーサイドロマンスの24(父ドレフォン)白老F
曾祖母シーリングから連なる牝系。近親にエリザベス賞(G1)を制したクイーンズリングがいます。本仔の祖母シースプレイは4戦未勝利。母シーサイドロマンスも1勝止まり。本仔はその4番仔で、2番仔で全姉のクリノハレルヤは2勝クラスに上っています。母父はショウナンカンプで勝ち上がり率は25%と今一歩。但し、牝馬の方が成績が優れ、勝ち上がり率は30%に上昇します。
父ドレフォンは海外の短距離G1を3勝した活躍馬。種牡馬として輸入され、本仔が6世代目になります。産駒の勝ち上がり率は45%。通算AEIは1.2で世代を重ねる度に上昇を続けています。初年度産駒から皐月賞馬ジオグリフを輩出し、直近ではミッキーファイトが帝王賞(Jpn1)を制しました。芝・ダートを問わず活躍馬を出す点が特徴。自身は短距離馬でしたが、産駒は中距離まで対応しています。性別傾向は牡馬>>牝馬で、牝馬の勝ち上がり率は39%、AEIは0.81に留まります。