2019年度グリーンF募集馬の第一印象③

2019年度グリーンF募集馬の第一印象の第3回です。(前回はこちら

今回は前回の続きで、各募集馬についての第一印象を書き留めて行きます。(あと1回続きます。)


8.オールドパサデナの2018

父  :キズナ
母父 :エンパイアメーカー
性別 :牡馬
毛色 :鹿毛
FN :4号族
誕生日:2018/04/05
生産 :社台ファーム

過去のグリーンファーム所属馬とは縁故関係のない牝系です。母オールドパサデナはマイル前後のダート競争で5勝を上げて、オープン馬まで上り詰めました。3歳時には関東オークスへの出走も果たし1人気に推されましたが、ここでは13着に敗れています。只、当日は不良馬場だった様ですので、普通に馬場が向かなかった可能性も高そうです。引退後は繁殖に上がり、本仔が3番仔になりますが、勝利を上げた兄姉はまだいません。初仔は勝ち上がることが出来ず、1つ上はこれからのデビューになります。

ダービー馬の父キズナは、その産駒が今年デビューを果たし、新馬勝ちを含めた複数頭の勝ち馬を早々に排出しており、順調な滑り出しを見せています。ディープインパクトの後継種牡馬の座は未だ定まらない状況ですが、その有力候補の1頭であることに疑いはないでしょう。配合上のポイントは現時点で語れる状況にありませんが、勝ち上がり馬の1頭であるビアンフェの母ルシュクルはUnbridled系であることから、母父がエンパイアメーカーの本仔とキズナの配合は決して悪い相性では無いと想像できます。

9.ツルマルオトメの2018

父  :リオンディーズ
母父 :タイキシャトル
性別 :牝馬
毛色 :青毛
FN :12号族
誕生日:2018/02/09
生産 :那須野牧場

2019年グリーンFから募集して欲しい仔馬」のシリーズで採り上げた仔馬です。詳細はこちらを参照して下さい。本仔の1つ上のサムシングジャスト(父:ヴィクトワールピサ)は、昨年、グリーンファームから募集され、新馬勝ちを収める素晴らしいデビューを果たしました。その後はクラッシック戦線を選択したこともあり、2勝目に苦労する状況ですが、それでも君子蘭賞では2着に入っていることから、条件次第で2勝目は遠くないものと思われます。

父リオンディーズの種牡馬能力は未知数ですが、父母にシーザリオを持つ血統背景はセレクトセールでも人気が爆発した同じキングカメハメハ系新種牡馬ドゥラメンテに引けを取るものではありませんし、半兄エピファネイアと比較しても血統的な評価は上であると見ています。それでいて、種付け料は両種牡馬と比較して割安ですから、安価に募集されている内に青田買いしたい気持ちにさせる1頭です。

なお、本仔の毛色は青毛です。サラブレッドの青毛の割合は白毛にこそ及びませんが1%以下とされており、希少価値が認められます。

10.ブルーモントレーの2018

父  :アイルハヴアナザー
母父 :ヘニーヒューズ
性別 :牡馬
毛色 :栗毛
FN :19号族
誕生日:2018/05/05
生産 :新井昭二牧場

本仔の募集に際して、真っ先に目が行ったのが生産牧場の新井昭二牧場です。過去、本牧場の生産馬がグリーンファームから募集された記録は無いと思われますが、母ブルーモントレー自身は那須野牧場が馬主であり、現在も所有者は那須野牧場から移転していない模様です。このことから、本仔は那須野牧場から母馬を委託されて新井昭二牧場が生産を行った仔馬であると考えられ、その意味では、前田ファーム・ハシモトファーム・吉田ファームなどと同様のスキームであると言うことになります。ちなみに、本仔の縁故関係にグリーンファーム所属馬はいないものと思いましたが、本仔の3代母Illeriaからの牝系を辿るとシーザサンに行きつきますので、全くの無縁と言う訳でもありませんでした。

一方で、父アイルハヴアナザーはケンタッキーダービーを始めとして米国GⅠを3勝した活躍馬で、ビッグレッドファームが鳴り物入りで輸入した種牡馬でしたが、これまでの成績を見る限り失敗であったと断じざるを得ない状況です。2018年度のサイアーランキングでも36位と低迷しており、遂には供用を停止され米国に帰国するに至りました。

本仔はブルーモントレーの2番仔で兄姉に勝利の実績がない上に、父が不人気なアイルハヴアナザーとなると、正直なところ、出資への魅力を見出すことは困難です。本仔の1つ上のキングバーグ(父:スピルバーグ)が昨年の北海道オータムセールで540万円で落札されているのに対し、本仔の募集がそれ以上の価格で行われることになれば、流石にグリーンファームでもセールスが伸びるとは考えられません。個人的には800万円でも高いと感じますから、ここは昨年に続いて特別募集馬として無償提供される可能性まであると予想しています。

11.デザートオブムーンの2018

父  :パイロ
母父 :ゼンノロブロイ
性別 :牝馬
毛色 :青鹿毛
FN :4号族
誕生日:2018/02/13
生産 :社台ファーム

まず、本仔の母デザートオブムーンはグリーンファームに所属して、中距離のダートで3勝を上げる成績を残しています。引退後は繁殖に上り、本仔はその初仔となります。
父パイロは米国からの輸入種牡馬で現役時代はダートマイル戦線で活躍をしています。その産駒は明らかなダート短距離偏重ですが、ビビーバーレルがフェアリーS(GⅢ)を制した様に、稀に芝で活躍する馬も生み出しています。

ダート血統の牝系に社台グループ生産馬としてはレアなパイロが配合された本仔には少なからず戦略性を感じますが、一方で配合的に見るとあまり良い組み合わせには思えません。パイロの産駒を調べると、Mr.Prospector, Danzigとの配合は成績が優れない傾向が見られます。母系の血が強く出て中距離までこなせれば良いのですが、父の産駒の傾向に従って短距離ダート脚質に出てしまうと、牝馬であることも含めて活躍の場が制限されてしまうことも難点と言えそうです。

12.クーデンビーチの2018

父  :ヴィクトワールピサ
母父 :パントレセレブル
性別 :牝馬
毛色 :鹿毛
FN :2号族
誕生日:2018/04/10
生産 :社台ファーム

元グリーンファームの所属馬で、400Kg前後の小柄な馬格ながらオープン馬として活躍したサザナミの半妹です。
父ヴィクトワールピサはドバイWC(GⅠ)を制した後、社台スタリオンで種牡馬生活に入りましたが、桜花賞馬ジュエラーを出した後は目立った産駒を生み出すことが出来ませんでした。350万円でスタートした種付料は今年150万円まで減額され、遂には繫養先も社台スタリオンからブリーダーズスタリオンに変更されています。只、不思議なことに父が社台スタリオンから追われたのと前後して産駒の成績が目立つようになり、今年はウィクトーリアがフローラS(GⅡ)を制するなどの活躍を見せています。これが、配合および育成上のポイントが見えて来たことによる成果であれば、ハービンジャーの様な復権もあるかもしれません。

ここで、ヴィクトワールピサ産駒の特徴は「牝馬の成績が牡馬よりも優れる」と言う点にあり、ヴィクトワールピサ+Nureyev+Mr.Prospectorの組み合わせも好配合と言えますので、牝馬に出た本仔のスペックは一定の評価が与えられるものと考えられます。加えて、グリーンファーム所属馬の2号族の勝ち上がり率が特異的に高い数値を示していることも、オカルト要素ではありながら背中を押すデータと言えるでしょう。
一方で、懸念材料は2つ上の全姉グレースベイの状況です。馬格こそ450Kg前後に育ちましたが、成績はイマイチ振るわず、勝ち上がりの危機に瀕しています。いくら統計的にスペックが評価出来たとしても、全姉の不振は最大の懸念材料として立ち塞がることになるでしょう。

サザナミは自分にとって初の一口出資馬です。その活躍も含めて極めて思い入れの強い競走馬ですので、その妹にも是非ともグリーンファームで活躍して欲しいと願っています。恐らく、サザナミの元出資馬の方の中には、その様に思っておられる方も多いものと想像しますので、懸念材料は無視してでも、一定の人気を集めそうな予感がします。個人的に、本仔は美浦の厩舎に依託して欲しいと願っており、例えば半姉ホウオウマリリンを管理された奥村武師の所ならば理想的です。

13.スルーレートの2018

父  :キンシャサノキセキ
母父 :フレンチデピュティ
性別 :牝馬
毛色 :黒鹿毛
FN :8号族
誕生日:2018/03/18
生産 :社台ファーム白老

近親にグリーンファーム所属馬のいない牝系です。母スルーレートは1000万条件馬ながら、フラワーカップ(GⅢ)2着、クィーン賞(GⅢ)3着の実績を残した活躍馬で、秋華賞への出走も果たしています。繁殖に上がった後も、札幌2歳S(GⅢ)3着のハイアーレートを産出するなど、マイル以下で安定的な成績を収める産駒を出し続けています。

父キンシャサノキセキは目立たないもののサイアーランキング10位+αを維持しており、種付料も200~250万円をキープし続けています。キンシャサノキセキ産駒の特徴は短距離適性にありますが、加えて、芝・ダートを問わない脚質も使い勝手の良さに繋がっています。只、気性的に煩い産駒が多く、過去のグリーンファーム募集馬をみてもその傾向は顕著です。正直なところ、グリーンファームとの相性はあまり良い種牡馬とは言えないでしょう。

只、その相性の悪さに目を瞑ってでも、本仔の配合には一定の魅力を感じます。本仔の父父フジキセキと母父フレンチデピュティはNIXの関係にありますから、キンシャサノキセキとの相性も決して悪いものではないはずです。両親のスピード能力が高いことから、本仔のスピード能力にも不安はないと考えて良いでしょう。クロスがNorthanDancerの5×5のみと薄目の点も、気性面に不安のあるキンシャサノキセキ産駒としては良い方向に寄与することが期待できます。

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